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教育研究所

書評:気になる1冊1112

「新しい時代の教育に向けた持続可能な学習指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」(平成31年1月25日 中央教育審議会)


 学校(教師)が多忙であることは,自他ともに認める「限界を超える(過労死)」状態にある。にもかかわらず,効果的な具体策はほとんど講じられることは無かった。教師が,子供と向き合う時間を確保でき,子供の教育指導とその準備(授業の構想と準備,研修など)に専念できる環境づくりを実現することは緊急の課題であり,子供の教育の質に影響する重大な問題である。

 そのような中で,「総合的な方策」に向けた答申が出された。文部科学省と教育委員会は,具体的な方策を推進していただきたいし,学校(教師)は自助努力を進めていただきたい。(期待が大きいあまり,生意気な言い方で申し訳ありません。)

 そのためにも本答申を精読し,それぞれの立場から「多忙解消」に向けた具体的な行動を起こす必要がある。これまでの掛け声だけで具体的な方策なし,教師への精神論の押し付けに終わらないように,文部省,教育委員会,校長会,各種教育諸団体,学校(教師),保護者・地域が連携・協働して取り組んでいただきたい。

 第1章「学校における働き方改革の目的」,第2章「学校における働き方改革の実現に向けた方向性」,第3章「勤務時間管理の徹底と勤務時間・健康管理を意識した働き方の推進」,第4章「学校及び教師が担う業務の明確化・適正化」,第5章「学校の組織運営体制の在り方」,第6章「教師の勤務の在り方を踏まえた勤務時間制度の改革」,第7章「学校における働き方改革の実現に向けた環境整備」,第8章「学校における働き方改革の確実な実施のための仕組みの確立とフォローアップ等」は当然として,別紙1「勤務時間の実態調査,OECD国際教員環境調査」,特に別紙2「基本的にが学校以外が担うべき業務,学校の業務だが必ずしも教師が担う必要のない業務,教師の業務だが負担軽減が可能な業務」を精読吟味し,実態に合った提言かどうかも含めて,クリティカル・リーディングをして,生かしてほしいものである。

 なお,この答申の別添1「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン(平成31年1月25日 文部科学省)」は,別紙2「基本的に学校以外が担うべき業務,学校の業務だが必ずしも教師が担う必要のない業務,教師の業務だが負担軽減が可能な業務」に関連したもので,教育委員会の環境づくり,学校(教師)が働き方を改革する際の「判断と対策」の貴重な手がかり(取り入れたいヒント,反面教師としてのヒントが混在している)となるものである。(H&M)