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教育研究所
書評:気になる1冊1117
藤川大祐編集「授業づくりネットワークNO.23 人工知能(AI)と授業」(学事出版 本体:1400円)
どこに行っても最近は,AIが話題になる。教育情報シリーズ№199「学習評価の用語これでスッキリ」(教育出版教育研究所)によれば,「artificial intelligenceの略。人工知能。人間の知的能力をコンピュータで実現するソフトウエアやコンピュータシステムのこと。AIの発展によって「人間はどのような影響を受けるのか」「人間はどうあるべきなのか」を考える必要があり,学校教育の内容や評価の在り方について検討する必要があるとの課題が指摘されている」と解説されている。
小学校の国語の「読む・書く・聞く・話す」,算数の「数と計算,図形,測定,変化と関係,データの活用」をはじめ各教科の内容は,AIを組み込んだものを使えば,知らなくても,できなくても「なんとかなる」というものばかり(?)である。
でも,学校教育はそのような単純なものではない。AIを内蔵した機械できることとはいえ,乳児が言葉を覚える過程で脳が発達し,幼児が遊びや人との関わりの中でさらに脳などが発達し,児童が(大人から見れば)簡単な事柄を学ぶ過程を通して脳や心などが発達し,人間として「知・徳・体」の調和的な成長が可能になるのである。従って,AIやコンピュータの発展が今後一層進化していくとしても,学校教育の根本は変わらないように思われる。そんな偏見を持って,本書を読んだが,多くのことを学ぶことができた。
巻頭対談「AIが汎用化された時代の学校教育とは」中邑賢龍×佐藤和紀,特集「AIと授業」(「テクノロジーの進化と授業づくりイノベーション」藤川大祐,「AIとは何か」新田克己,「クラスルームAI―教諭・ロボット連携授業実践―」山口高平,「IoT(モノのインターネット)について学ぶ授業開発―半歩先の未来をどう教えるか?」阿部学,「変革期の学校教育とテクノロジー広池学園のキャリア教育」金子暁,「人工知能ロボットが授業をサポートする小学校」山下芳一,「ICTで協働学習を可視化する!」鈴木正実,「子どもの興味,発達段階に合わせた最適の絵本がわかる!」服部正嗣,「人工知能の観点から見る自閉症スペクトラムの世界」小川修史,「根拠のある介護をテクノロジーで支える」宇井吉美,「魔法の世紀の学習はどのようにデザインされるのか」落合陽一)と,多様な観点からの提案,実践報告とがあり,クリティカル・リーディングをすれば,多くを学び取れる。 (H&M)