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教育研究所

書評:気になる1冊1134

茂木誠著「世界史とつなげて学べる超日本史」 (KADOKAWA 本体:1600円)


 カバーの裏に,「そもそも日本は世界の一部なのに,なぜ教科書の日本史は,かたくなに日本のことしか扱わないのか?日本史に世界史をつなげて学んでみれば,なぜ今の日本が存在しているのか,この国の強みはどこにあるのかまでが一気に見えてくる」と書いてあり,それに魅かれて,本書を読むことになった。小学校から大学まで,日本史と世界史を別々に考えてきたし,今でも考えているから・・・。

 本書の記述を史実かどうか判断するだけの能力も教養も,私にはない。でも内容は「面白かった」し,日本史と世界史を関連させながら考えていくことの「良さ」は分かったような気になった。

 第1章「そもそも日本人はどこから来たのか?(DNAが解き明かした日本人の起源とはなど5節)」,第2章「神話と遺跡が語る日本国家の成り立ち(卑弥呼と同じ時代を生きた天皇は?など6節)」,第3章「巨大古墳の時代と東アジア版民族大移動(国際的なモニュメントだった巨大遺跡群など4節)」,第4章「白村江の敗戦から日本国の独立へ(壬申の乱は唐と新羅の代理戦争だったなど6節)」,第5章「大唐帝国から見た東方の大国日本(二百年間日本に朝見を続けた渤海の狙いなど4節)」,第6章「動乱の中国から離れて国風文化が開花した(遣唐使の廃止そして国風文化の確立など4節)」,第7章「日本史を東アジア史から分かつ武士の登場(武士とは武装した開拓農民であるなど5節)」,第8章「シーパワー平氏政権vsランドパワー鎌倉幕府(国家社会主義から市場経済体制へなど5節)」,第9章「国際商業資本が支えた室町グローバリスト政権(鎌倉幕府は経済失政によって滅んだなど5節)」,第10章「ポルトガル産の硝石を求めた戦国大名たち(マルコ・ポーロ「ジパング」の情報源とはなど6節)」,第11章「豊臣秀吉の伴天連追放令(註:伴天連=バテレン=カトリック宣教師の総称)と朝鮮出兵(九州がフィリッピン化した可能性など6節)」,第12章「鎖国を成立させた幕府の圧倒的な軍事力(鎖国という重武装中立のシステムなど7節)」,終章「徳川の平和そして明治維新を可能にしたもの(江戸の花火―大砲技術の平和利用など3節)」と,改めて世界史の中の日本を見つめ直すことができる。

 また,これでもか,これでもかと繰り広げられる歴史にまつわるあれこれ,著者の博識には驚くばかりで,敬意を表する次第である。(H&M)