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教育研究所

書評:気になる1冊1154

山中信弥&平尾誠二・惠子著「友情―平尾誠二と山中伸弥・最後の一年」(講談社 本体:1300円)


 ノーベル賞の山中伸弥先生と,ミスター・ラグビーといわれた平尾誠二選手との2010年から2016年の短いが最高に濃い友情の物語である。

 内容は以下のような構成になっている。特に,★1(親の愛情を受けて育った,雌ザル子ザルに人気がある,離れザルになるなど逆境を経験している),★2(叱る4つの条件:プレーを叱っても人格は責めない,後で必ずフォローする,他の人と比較しない,長時間叱らない),校長先生,副校長・教頭先生をはじめ,ミドルリーダーの先生,児童生徒と向き合って質の高い授業づくりに努力し続けている全ての人に役立つ。

 第1章は,山中伸弥「平尾誠二という男」で,「ドラマの主人公そのままの男」「どうやら癌みたいです」「僕は声をあげて泣いた」「免疫療法に望みを託す」「今も彼の声が聞こえる」など感動の逸話が,臨場感をもって読者の心を揺さぶってくれる。

 第2章は,平尾惠子(平尾誠二夫人)「闘病―山中先生がいてくれたから」で,「無償の友情」「ノーベル賞受賞前夜」「二人の距離を一気に縮めた出来事」「ボスザルの3つの条件(★1)」「治療法をめぐる迷い」「自分より先生を心配した主人」「僕は先生を信じると決めた」「13か月間,一緒に闘って」と,山中先生と平尾選手の本物の友情を静かに語っている。

 第3章は二人の友情のきっかけとなった「週刊現代」の対談を未公開部分も含めて掲載したもので,,平尾誠二×山中伸弥「対談:僕らはこんなことを語り合ってきた」で,テーマ1「僕らもスクール・ウォーズ世代(憧れのヒーローなど)」,テーマ2「技術革新と倫理観(ips細胞をどう活用するか・再生医療と創薬,常識を疑う力など)」,テーマ3「人を叱るときのつの心得(叱られて落ち込むのは当たり前(★2),チームワークは助け合いではない,リーダーシップ論など)」,テーマ4「次代を担う若い人たちへ(経験のなかで自信を獲得する,若者よ海を渡れ,理不尽が人を成長させるなど)」,テーマ5「世界の壁にどう立ち向かうか(10人対100人の綱引きに勝つには,1%でも勝利の可能性を追究する,日本独自の匠が失われている,切り札を持て)」と,人生の指針になるヒントが散りばめられている。(H&M)