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教育研究所

書評:気になる1冊1156

菅野仁著「友だち幻想~人と人のつながりを考える~」(ちくまプリマ―新書 本体:740円)


 自分をいの一番にして,友達付き合いの下手な人は少なくない(と思う)。もし,もう少し交際の仕方が上手だったら,人生が変わっていたかもしれないと思わないでもない。でも,だからと言ってこれまでの人生に特別な不満は持っているわけではないし,お調子者のようにはなりたくないし・・・。

 我が家には孫が4人いる。特に友人関係に悩んでいるわけではないが,本書を読んで友人というもの,友人関係というものについて,ちょっぴり考えてもらいたいということで,バーバ(ばばあではない)が買ってきたのである。「孫たちに渡す前にどんな内容なのか知っておきたいのでジージが読んで,簡単に説明して!」ということで,読むことになった。

 でも,とても読み応えのある本で,初版24刷というロングセラーになるだけはあると思った。中高生を対象に書いた本であるが,大人(子どもや孫のいる人は特に)にも,児童生徒と直接かかわる先生方に,特に,好ましい人間関係づくりについて指導をする学級担任の先生には,一読をお勧めしたい。(ただし,学者らしい特有の専門用語を使っている部分があり難しいと感ずるかもしれない。そういうところは飛ばして読み進めればよい)

 内容は次のような構成になっている。「面白そうでしょ!」だから,読んでみましょう。

「はじめに・友人重視志向の日本の高校生」,第1章「人は一人では生きられない?(一人で生きていける社会だからこそ<つながり>が難しいなど2節)」,第2章「幸せも苦しみも他者がもたらす(自己充実―幸福モニュメント1,他者との交流―幸福のモニュメント2,人は他者の二重性に振り回されるなど12節)」,第3章「共同性の幻想―なぜ友だちのことで悩みは尽きないのか(なぜいない人の悪口を言うのか―スケープゴートの理論,同調圧力・友情が脅迫になる,やり過ごすという発想・無理に関わるから傷つけあうなど10節)」,第4章「ルール関係とフィーリング共有関係(フィーリング共有関係の負の部分,ルールは自由のためにあるなど7節)」,第5章「熱心さゆえの教育幻想(先生は生徒の記憶に残らなくてもいいなど3節)」,第6章「家族との関係と,大人になること(君たちに無限の可能性もあるが限界もあるなど4節)」,第7章「傷つきやすい私と友だち幻想(目上の人との距離感,友だち幻想など5節)」,第8章「言葉によって自分を作り変える(関係が深まらないコミュニケーション阻害後・ムカツクとうざい・ていうか・チョウ・カワイイ・ヤバイ・キャラがかぶる・KY,楽しても楽しくないなど9節)」,「おわりに―友だち幻想を超えて」。

 実は,本書は,著者の娘が「友人関係の悩み」に直面した時のことが元になって生まれたのだそうだ。そういう意味でも,実証的で説得力がある。(H&M)