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教育研究所
書評:気になる1冊1159
「平成30年度 全国学力・学習状況調査 活用事例集」 (平成31年3月 文部科学省)
本事例集は,平成30年4月に実施された全国学力・学習状況の調査結果を活用した,9県(秋田,茨城,富山,福井,長野,岐阜,静岡,山口,沖縄),11市(静岡,浜松,堺,福岡,青森,燕,鶴ヶ島,松江,徳島,松山,十和田),2町(石川県川北,石川県穴水)の各教育委員会の活用事例を収録したもので,焦点の当て方,企画の仕方,実施の仕方,研修・共通理解の仕方など,多くの工夫・改善を学び取ることができる。
調査結果の活用で重要なことは,「学力調査の傾向と対策」にならないことである。その上で,「良い点を確認し,それをさらに良くなるようにする」「課題を見つけ,原因を探り改善する」「不足する事柄を見つけ,新規導入など対策を講じる」ことが重要である。さらに必要なことは,「指導計画の見直しと改善」及び「日常の授業の改善」につなげることである。
どの教育委員会の事例も素晴らしいものであったが,特に参考になったものの一部を以下に紹介する。
〇福井県などのように調査結果の分析から,授業改善の共通理解を図る研修会を実施して,受講した教員が自校の他の教員へ伝達講習をして学校全体の授業改善につなげる。
〇長野県教育委員会や燕市教育委員会のように,例えばS-P表を用いて,それぞれの学級の良い所や課題を捉え,それを授業改善に生かしている。
〇松江市教育委員会は,「8マス発想法マンダラ」(註:小さな正方形9個で構成された大きな正方形の真ん中の小さな正方形に課題(問題)を置き,その周りの8個の正方形に解決の視点や方策を記入して発想を整理する発想法)を用いて「学力調査の分析・対策を校内で広めていくには?」を課題として,各学校における「学力の育成方策」を具体的に考察させている。
〇青森県教育委員会は,学校の教育力を高めるために授業改善の実践を奨励し,それを「子供に学ぶ意欲を体験させ,確かな学力の向上を図るわかる授業づくりに努めている」ことについて教職員や保護者や児童生徒に,「教員としての資質向上を図るため,校内外の研修に積極的に取り組むなど,常に学び続けようとする姿勢をもち続けている」ことについて教職員や保護者に評価させ,検証している。(H&M)