ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:気になる1冊1162
教育研究所
書評:気になる1冊1162
川前あゆみ・玉井康之・二宮信一編著「豊かな心を育むへき地・小規模校の教育~少子化時代の学校の可能性」(学事出版 本体:2500円)
都市部から遠く離れた地域,辺鄙な地域(交通の便が悪く,医療機関も不十分)を「へき地」という。自分も,そういう所で生まれ,育ち,学校に通ったので,体験的にわかっているつもりである。立川市に都立多摩教育研究所(現在は廃止閉所)に勤務したことがあり,へき地の教育(僻地教育ではない)に関わったことがある。その時,所員と取り組んだことは,「都市部の教育を良しとして取り入れる」だけでなく,「へき地の学校で実践している良い所を逆に発信していこう」ということであった。
本書を目にして,書名から「なんとなく,地方からの発信という雰囲気」を感じ取って,読み進めることにした。学校や学級の規模から見れば,へき地にある小さな学校は,都市部の校舎は大きいのに児童生徒の少ない学校と共通している。したがって,指導体制や学習形態も多くの点で共通するところが存在する。
そこで,へき地の学校と都市部の小規模校とを「子どもに質の高い教育を保障する」という共通のねらいから捉え直し,創造的に開発していくことが求められているといえよう。
内容は,以下の6部構成で,へき地の教育が進めてきたこと,へき地や小規模校の教育が果たす可能性に期待するものである。各学校,各学級の教育指導・授業の改善に向けて,きらりと光るヒントを見いだし,活用していただきたい。
「はじめに―教育の豊かさを創るへき地・小規模校教育の可能性」,第Ⅰ部「過去の支配的なものの見方の逆転―へき地・小規模校教育のパラダイム転換(少人数を活かすへき地・小規模校の教育理念と汎用的活用の可能性など3章)」,第Ⅱ部「少人数の学級経営―社会性・協働性・コミュニケーション力の育成(社会性を育む小規模校の学級経営・集団づくりの基本的観点と課題など4章)」,第Ⅲ部「少人数の学習指導―自立性・相互性・協働性の育成(自己教育と相互教育を意識化させる少人数・複式授業運営の基本的観点など3章)」,第Ⅳ部「へき地のカリキュラムマネジメントー地域を生かした横断的学習活動(地域性を活かした地域教材化とカリキュラムマネジメントなど4章)」,第Ⅴ部「小集団を生かす特別支援教育―社会資源の少ないへき地の地域ネットワーク(障害のある子どもと地域をつなぐ教師の役割など3章)」,第Ⅵ部「へき地教育プログラムーへき地・小規模校教育を担う若手教師の役割(へき地・小規模校教育から人口減少社会の未来の教育をデザインするなど3章)」,「おわりに-へき地・小規模校教育から教育の光を」。(H&M)