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教育研究所

書評:気になる1冊1165

岡田恵美子著「言葉の国イランと私~世界一お喋り上手な人たち」(平凡社 本体:2500円)


 かつて,体力のある頃は,生活費を節約して,海外旅行に頻繁に行っていた。いろいろな体験をしたが,本書の「はじめに」の「(略)私は,イラン・ペルシャ研究を先導された先輩方からイランに対してばかりか諸外国の人々に対する,総じていえば異なる文化への,謙虚な敬意を持った態度をつぶさに学んだつもりである。日本はこれから,何十万という外国人を受け入れることになるだろう。あの人は肌の色が違う,この人は気になる匂いがするなどと言っている場合ではない。(略)ぜひ偏見をもって人を見る習慣を捨ててほしいと願っている。私たちとなじみのない宗教,食習慣,感情表現......などはきっとあなたの世界を見る目を豊かにしてくれるに違いない」という言葉に,その通りだと妙に納得してしまった。

 こちらから見ておかしい(変わっている)と思うことは,向こうから見たこちらもおかしい(変わっている)ということになり,分かり合えば(認め合えば),「なるほど,そうなのか...!」と,気にならなくなり,親交が深まるものである。本書は,そのあたりのことを,理屈抜きに分からせてくれる。学校では,ますます進展するグローバル化を強く意識し,具体的な国際理解教育に力を入れているが,このあたりのことも考慮していただきたい。

 著者は,以下のような内容を通して,自身のイラン留学や,東京外国語大学でペルシャ語を担当し,今なお日本イラン文化交流協会会長を務めている中で,豊かな経験を基にして,互いに「謙虚と敬意」をもって交流することを期待していると訴えている。もちろん,国際理解教育のヒントにもなる。

 「イランと私(砂漠と出会う,象牙の帯どめ,国王への手紙,その頃のイランなど14の話題)」,「留学の記(1年目サラーム,2年目陶酔境,3年目神秘主義,4年目ホダーフェズ(さよなら)などについて22の話題)」,「今のイランいつものイラン(イランは今~鷹揚な絨毯屋さん・ペルシャ文字の渡米など,イラン人の衣食住~おしゃれの黒衣・イランの年中行事・イラン古来の習俗など15の話題)」,「ペルシャの箴言・イスラームの知恵」。(H&M)