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教育研究所
書評:気になる1冊1170<世界の通学路>
ローズマリー・マカーニー文・西田佳子訳「すごいね!みんなの通学路~世界に生きる子どもたち」(西村書店 本体:1500円)
本書は,28枚のカラー写真と短文で,世界の子供たちの通学風景を紹介した極めてシンプルな本(写真集)です。
日本では,A小学校の子供たちは近所の子供が誘い合い,通学路を徒歩でおしゃべりしながら楽しく登下校します。B小学校は,広い地域に一つしかない学校なので,通学バスで登下校します。C小学校は,通学バスの通らない地区があり,両親のどちらかに自動車で送り迎えしてもらっています。私立D小学校は,公共交通機関(電車やバス,地下鉄,モノレール)で通学しています。共通しているのは,非常に安全だということです。ところが,本書に紹介されている通学風景は,日本では想像もできない「驚き」の状況です。その通学風景をいくつか紹介しましょう。
<その1>広い谷の高い所に,上下にロープが張られています。両足で下のロープを踏みしめ,上のロープを両手で握りながら,カニのように横歩きで,サーカスのように渡っていくのです。写真で見る限り命綱は付けていないようです。
<その2>子供たちは,橋のない川を集団で,ズボンやスカートが濡れないように持ち上げながら渡っていきます。小さな子供は大人にだっこされて渡っています。大雨が降って水かさが増した時は渡れないので,学校を欠席することになるそうです。
<その3>広くて深い川を渡らなければならないときは,川にロープが張ってあり,大人の助けを借りて,子供たちも協力して,ゴムボートで,ロープを手でたぐりよせながら渡ります。カヌーのような小舟を子供たちだけで漕ぎながら渡っていくこともあります。
<その4>高地の冷たくて滑りやすい雪の塊の中を,前,真ん中,後ろを大人に守られながら這うようにして通学する子供たちもいます。
でも,子供たちは,学校でいろいろなことを勉強したいので,そんな困難に負けることなく通学し,そして意欲的に学んでいます。
ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは,ノーベル賞の賞金で「マララ基金」を設立し,学校を作って子供(特に少女)たちが教育を受けられるように助けています。こんなに頑張っている子供たちのために,私達にはどんなことができるでしょうか。私ですか,帰宅したとき小銭入れに入っている1円玉,5円玉,10円玉,50円玉を貯金箱に入れ,ある程度たまると然るべき所に送金し,雀の涙ほどの支援を何十年も続けています。(H&M)