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書評:気になる1冊1180<サバイバル語録>

上野千鶴子著「上野千鶴子のサバイバル語録」(文春文庫 本体:560円)


 著者は,万能であれからこれまであらゆることに自らの知見を旺盛に発信し続けていることで知られている。社会学者で東大名誉教授の著者が,平成31年4月12日の東大入学式での「祝辞」が話題(内容は,簡単に検索できるのでここでは省略。でも,そっとあなたに,祝辞の元ネタは,本書の「はじめに」pp16~19にあるようだ)になっている。

 サバイバル(survival 生命の危機から生き残ること)語録ということなので,著者と同じくらい人生を過ごしてきたのに,「生きているという輝きを一度だに感じたことがない」我が身でも,これからでも遅くはない「ほんのちょっとでも輝くこと」ができるだろうかと一縷の望みをもって本書を手にした。勿論,若い人,今社会の中で存在感を感じて何かを打ち込んでいる人には,更に輝くための「人生の指標」になるに違いない。

 内容は,次のように8章140語,しかも1語1頁で,スマホに触れるような感覚で読み,理解し,感想を持つことができるような構成になっている。

 第1章「人生のサバイバル語録(逆風は快楽である,万人に感じよく思われなくていいなど17語)」,第2章「仕事のサバイバル語録(立ちはだかる壁は迂回せよ,仕事は飯のタネに過ぎないなど25語)」,第3章「恋愛・結婚のサバイバル語録(友達とカップルの違い,パパとママが子供へ伝えるべきことなど24語)」,第4章「家族のサバイバル語録(親から子への正の贈り物負の贈り物,家族とは一緒にご飯を食べる人のこと,親業の最後の目標など15語)」,第5章「一人のサバイバル語録(キモチよい集団キモチわるい集団,友人づくりが難しい理由,相手にすべてを求めない,自然は孤独の最大の友など9語)」,第6章「老後のサバイバル語録(人生は壮大なヒマつぶしである,よくわからないから不安になる,どんな強者も年を取れば弱者になる,老いるのに成功も失敗もないなど19語)」,第7章「女のサバイバル語録(現実はほんとうらしいウソうそっぽうウソのあいだに,踏み台になってたまるか,女は世界を救えるかなど13語)」,第8章「未来のサバイバル語録(泥船からは逃げ出してもよい,歴史とはいつも中途ハンパなもの,その日ぐらしは最悪であるなど16語)」で,自分のサバイバルにつながる「語」がいくつか見つかるかもしれない。(H&M)