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教育研究所
書評:気になる1冊1182<クラゲの秘密>
久保田信著「不老不死のクラゲの秘密」 (毎日新聞出版 本体:1500円)
人間は,人間自らが創造・進化させた科学や生活ぶりによって地球環境を悪化させ,今や人間自身いや全ての生物を絶滅の危機に陥れようとしている。
様々な違いを乗り越え,強調し,共存し,知恵を出し合って,本気でこの危機を乗り越えていかなければならない時になっているのである。対立や戦争をしている時ではないのである。学校教育も,環境教育をはじめとして,環境破壊,自然破壊,戦争と平和,共存共栄などについての指導を充実させる必要がある。
ちょっと,気負い過ぎました。そんな悪化しつつある地球環境の中で,「不老不死のクラゲ」(日本産のベニクラゲ)がいるそうだ。「え!」と思い,人間をはじめすべての生物の生存の何かのヒントになるかもしれないと,読むことにした。実際に読み進めると,大上段に振りかぶった気持がどこかにすっ飛んで,「死なないベニクラゲの不思議」の虜になってしまった。
第1章「死なないクラゲ現る(老いない秘訣は紅色にあり,死なない体の中を拝見,不老不死の進化は新しいなど10節,コラム1)」,第2章「ベニクラゲの一生(クラゲたちの複雑怪奇な成長過程,生き残るためには二刀流が必要など4節,コラム2・3)」,第3章「ベニクラゲとの日々(全ての原点は海にあり,人間のルーツを求めて,若返りクラゲとの再会,初めて命を若返らせた日など9節,コラム4・5・6)」,第4章「若返るベニクラゲ(未熟児クラゲこそわかるチャンス!,もう一つの延命法など6節,コラム7)」,第5章「人間は不老不死になれるか(死の起源・不死の起源,若返りのメカニズムなど4節,コラム8・9)」と,本書の科学性を裏付ける「主要参考文献17」。研究者らしからぬ平易・簡潔な文章で,小学校高学年や中高生でも読みこなせる。 (H&M)