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書評:気になる1冊1187<ポアンカレの贈り物>
南みや子&永瀬輝男著「ポアンカレの贈り物―数学最後の難問は解けるのか―」 (講談社BLUE BACKS 本体:900円)
本書は,男子学生が,恋した女子学生に,「僕が実現した多様体」をプレゼントし,それをきっかけとして数学の話が展開してゆき,やがて「ポアンカレの予想問題」につながってゆく。それを「物語風」に綴ったものである。
「ポアンカレの予想問題」そのものはいまだに数学者でさえ解決に至っていないと言われているようですから,数学の苦手な人にはちょっと抵抗があるかもしれません。でも,なんでこのような難しいことを考えるのだろうかというような野次馬的な気持ちで,少し読んでみたらいかがでしょうか。
本書で著者は,数学を勉強している人,「ポアンカレの予想問題」に挑戦したいというような若者を対象にして著したということである。(「まえがき」より)
我が家の小6の孫は,本書のタイトルを見て「ポアンカレ―って,どんなカレーなの? 激辛なの?」ととんでもないことを言っている。そんな環境の中で,固まりかけた脳みそを励ましながら読んでみた。分からない部分はスルーしても,なんとなくわかったような気分になりつつある。
ただし,「ポアンカレの予想問題」が超難問であることは分かったもののその解決に関しては,まったく???であった。「難しいこと」を「難しい」と認識するだけでも素晴らしいと我が身を慰めているとことである。是非一読を・・・。
第1章「立花君がくれた(バン式計算方法,あらゆる可能性,風の定義,集合の集合など10節,★註:この章では,小学校の分数の計算の仕方,中学校の正負の数,高校の証明の初歩など易しいことから展開し,結構面白く誘導してくれる。)」,第2章「立花君が消えた(ホメオグラス,一次元のボールと二次元のボール,多様体とは,囲いのない囲いなど18節)」,第3章「なぞの多様体(三次元のスフェア,ポアンカレの予想,世紀の難問ポアンカレ予想など9節)」,第4章「多様体を解剖する(異次元の薔薇,数学者の手品,ハンドルボディ,解決への道など16節)」,「あとがきに代えて―ポアンカレ予想に対するハーケンの戦略―(★註:数学の専門的な解説である)」。(H&M)