ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:気になる1冊1188<東京人7月号>
教育研究所
書評:気になる1冊1188<東京人7月号>
「東京人tokyo jin令和元年7月号」(都市出版 定価:930円)
本誌は,東京のことを様々な視点から楽しませてくれる月刊誌である。今月号の特集は,江戸の名所は高低差だらけ,浮世絵で旅する江戸東京地形散歩「浮世絵で歩く東京の凹凸」で,皆川典久×能町みね子×渡邊晃が「座談会」形式で,10のキーワード「街道・橋・坂・濠・展望台・警告・崖・滝・山・埋立地」と「高低差建築は東京の新名所は?!」に即して案内してくれる。
ちなみに,東海道に迫る崖,隅田川花火大会の源流,江戸時代の土木技術やトイレ事情,外堀沿いの景色,低い所からも見える富士山,石神井川の刻んだ深い崖,台場,大名庭園の絶景,待乳山聖典,埋め立て地の喧騒などである。「高低差建築は東京の新名所」としては,山の手の六本木ヒルズ・赤坂サカス・ワテラスなど,川の手の渋谷ストリーム・虎の門ヒルズ・京橋エドグランなどを紹介している。浮世絵や古地図がふんだんに使われていて,現代と浮世絵の時代を往還させてくれる。
他にも,広重や北斎が描いた江戸の実態に迫る「地形が創り出した都市景観」,再開発で誕生「上りたくなる階段Best5」,太田記念美術館「江戸の凸凹―高低差を歩く展開催中!浮世絵で江戸東京の地形の体感」,浅草来集軒の巻・林家正蔵「名物シューマイを今日はソースで」,赤坂人物散歩「獅子文六―昭和を生き生きと描いたユーモア小説の名手」,林聖子に聞く「林聖子の90年」,河合雪之丞×篠井英介「女方という生き方,その技芸」なども楽しめる。
東京に住んでいてすっかりわかっているつもりなのに,「こんな所もあったのか!」「こんなに素敵なのか!」と,新しい発見や素敵な間接体験ができる。そのうち,紹介されている何か所かに,実際に行ってみようと思う。(H&M)