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書評:気になる1冊1193<能力・努力・運>

宮城音弥著「能力・努力・運―成功の条件と生きがい―」(岩波ジュニア新書 1981年当時定価:530円)


 最近、紙ベース本の出版が苦戦しているそうだ。一時電車の中であちこち読んでいる人のいたデジタル本も最近はめったに見かけない。 

 神田神保町の古書店(御多分に漏れず、古書店もめっきり減った)で本書を見つけて、何十年ぶりかで再読した。

 著者は「はじめに」で、アメリカの学者の説を引いて、成功の条件は、「能力50%」「努力35%」「運15%」という数値をあげている。著者は、心理学と精神医学を専攻し、医学博士で心理学者として活躍した人(1908年~2005年)で知らない人は少ない。

 本書は、ハウツーものではなく、宮城先生らしい「素朴な成功(仕事や試験にうまく取り組む)」について、自分(教師なら目の前の子供)の能力、性格、考え方などを捉えて、対策を立てることを推奨している。

そんなことで、あれこれ迷っている若手の先生方が打開のヒントを得るために、ちょっと自信のある先生方の振り返りとして、役立つ1冊であると思う。もちろん、ジュニア新書なので、平易かつ簡潔であり、中高生に読ませたい。

 「はじめに(著者の成功についての考え)」、第1章「能力(自分の能力をどう見るか、頭の程度をはかる、適した能力を見出す)」、第2章「能力×努力―学習と記憶―(上達はどのようになされるか、記憶とは何か)」、第3章「努力(努力の土台、努力を妨害するもの、努力を強めるものー1、努力を強めるもの―2、努力を増す方法)」、第4章「運(運に頼るべきか、確率をどう判定するか)」、第5章「生きがい(成功とはなにか、生きがい)」「あとがき(成功と生きがいについての著者の考え方)」。
 ★「生甲斐」とすべきだが、原典に従いました。 (H&M)