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書評:気になる1冊1194<キレる!>

中野信子著「キレる!」(小学館新書 定価:842円)


 本書は、高速道路で「キレて」あおり運転をして死傷事故を起こす人、(普通なら可愛い我が子に)児童虐待をする人、学校や幼稚園・保育所などに自己中心的・理不尽な要求・クレームをする保護者(嫌な例えであるがモンスターペアレントという)等について、脳科学者で医学博士の著者が、脳生理学の視点から研究し、まとめたものである。

 著者は、「キレる」を、ネガティブに捉えずに、脳科学的に分析して、具体的な対処法や活用法を考察し、その一端を本書で紹介している。そして、「キレられっぱなしではダメ!」、「キレるという感情は人間にそもそも備わっているもの」だという視点から分析し、「キレる人」や「キレる自分」に振り回されることなく、怒りの感情を上手に生かしていくべきだという。本書のキャッチコピーに、「脳科学から見た・メカニズム・対処法・活用術」はそのあたりのことを主張したものであろう。

 では、「どうすればいいの!?」と言いたくなる。「キレる人」に、あれこれされる多くは、「キレていない人」だからである(と思われる)。

 そこで、著者は本書の中で、怒りの感情を上手に生かしていくべき方法を探り、怒りの感情を上手に生かすいくつかの提案を具体的にしている。自分の感情、特に「怒りの感情」をコントロールすることは、大人も子供も必要なことで、有益なことだと思った。これは、体罰を防ぐ「アンガーマネジメント(anger management≒怒りのコントロール)」としても役立つと思った。

 でも、そもそも「キレる人」が本書を読んで、自分の「キレる!」をコントロールできるようになるものだろうか?と、考えてしまう。そこで、「自分は、キレやすい性格で、これまでに多くの人に迷惑をかけたし、自分人も損をしたことが多かった。この本をもっと早く読んでおくべきだった。参考のために、この本をちょっと読んでみたら...」と、さりげなく勧めてみたいと思う(「なんだ!、俺がキレやすい人間だというのか!」と、「キレる!」恐れがあるかも......)。(H&M)