ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:気になる1冊1201<100年人生七転び八転び>

教育研究所

書評:気になる1冊1201<100年人生七転び八転び>

外山滋比古著「100年人生七転び八転び」  (さくら舎 本体:1400円)


 諺の「七転び八起き」はよく耳にする。でも,「100年人生七転び八転び」(外山慈比古,さくら舎)には,「誤植?」と一瞬疑った。実際に手に取ってみると,間違いではなく,著者一流の主張の知的テクニックであった。

 著者の「思考の生理学」は,いまだに読まれているロングセラーで,この本が出版されたのは昭和61年4月,都教委に新米指導主事として勤務していた頃で,新鮮な気持ちでむさぼり読みをしたものである。その著者は現在95歳,知の巨人として,「喋ることは運動であり頭の刺激になる」,「知力は老化とは無縁だ」と断言している。

 ということから「七転び八転び」は,転んでも起き,転んでも起き,頭を未来形で働かせると若くなるとし,枯れない生き方「試行錯誤の人生論」として,本書を上梓したようである。つまり,従来は「七転び八起き」で「失敗は成功の母」となったが,人生100年時代は七転びどころではなくなく,「X転び(X+1)起き」という時代であるということであろう。高齢者が読めば,老後に2000万円が必要だというようなことに気を取られることなく前向きに生きる希望が湧いてくるし,そうでない人が読めばこれから何十年もある人生設計に役立てることができよう。(余談であるが,著者は,いまだにパソコンのワードやエクセルに頼ることなく,万年筆で綴っているそうである。)

 内容は,1「反常識の道を行く」,2「ころがる石あたま」,3「知と独創のおもしろさ」,4「遠くて近い思い出」,5「退屈は人生の大敵」,6「人間の不思議」,補遺「100年人生を生きるコツ(外山滋比古談)」で構成され,「脳」を刺激してくれる。(H&M)