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書評:気になる1冊1214<リーチ先生>

原田マハ著「リーチ先生」(集英社文庫 本体:880円)


 主人公バーナード・リーチは,東洋(日本)と西洋(イギリス)の架け橋となった陶芸家で,本書はリーチの生涯を描いた感動の実話(アートフィクション)である。

 リーチが日本に関心を持つようになったのは,ロンドンに留学中の詩人で彫刻家の高村光太郎(ロダンにあこがれ,1907年にロンドンに1年1か月,その後1908年にパリに1年間留学している,智恵子抄でも有名)と知り合ったことがきっかけだと言われている。

 実はリーチの祖父は,京都の中学校で英語教師をしていて,リーチは1891年から4年間ほど日本に住んでいたことがあった。高村光太郎と知り合い,日本に郷愁を感じ,1909年に再び日本の戻り,東京の上野に住むようになった。そして,生涯の友となる柳宗悦や濱田庄司ら白樺派の人たちと知り合い,日本人芸術家との交流がリーチをして芸術家としての成長を促し,陶芸家として「7代乾山」の免許を与えられるきっかけにもなった。

 また,白樺派や民芸運動にも参加し,柳宗悦の日本民藝館の設立などにも協力したことでも知られている。

 本書の内容は,「プロローグ」,第1章「僕の先生」,第2章「白樺の梢,炎の土」,第3章「太陽と月のはざまで」,第4章「どこかに,どこでも」,第5章「大きな手」,「エピローグ」となっており,リーチの芸術家,日本文化・芸術と西洋文化・芸術の架け橋の役割を果たした人となりに触れることができる。 (H&M)