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教育研究所

書評:気になる1冊1218<教育の方法と技術>

稲垣忠編著「教育の方法と技術」(北大路書房 本体:2200円)


 本書には,「主体的・対話的で深い学びをつくるインストラクショナルデザイン」という長いサブタイトルがついている。「Instructional Design」とは, ある環境において最適な効果を上げることを目的にした教育設計(教育課程,教育計画)のことで,新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を実現する「教育設計」を提言していることが推測できる。それで,本書を読むことにした。

 「これさえ知っていれば大丈夫!」「これこそが本当の授業だ!」と声高な主張をするつもりはない。むしろ,「自分ならこんな工夫がしてみたい」「あの方法に今度チャレンジしてみよう」と,わくわくした気持ちになれる本にしようと企画してみた。と,著者代表の稲垣氏は「まえがき」で,謙虚に(自信ありげに)述べている。

 本書は,教育学部に学ぶ学生のテキストであり,学生を指導する大学の先生が,15回の講義で使用するレジュメ(だから15章の構成になっている)であり,現役の小・中・高校の先生方の授業の改善・工夫(あるいは若手教師の指導を担当する指導主事やベテラン教師の虎の巻として)のヒント集である。クリティカル・リーディング(内容の是非や価値を吟味しながら熟読)して,目の前の子供たちに「質の高い学習をさせる」授業づくりに活用したい。

 第1章「ガイダンス1・これからの子どもたちに育みたい資質・能力(これからの世界を生きるためになど4節)」,第2章「ガイダンス2・教師に求められる授業力とは(授業を実践するために必要な知識など4節)」,第3章「設計の基礎1・授業をつくるということ(主体的・対話的で深い学びに向けてなど3節)」,第4章「設計の基礎2・評価をデザインする(目標と評価と指導の関係など4節)」,第5章「設計の基礎3・学習環境をデザインする(学びの空間をデザインするなど4節)」,第6章「実践の基礎1・授業を支える指導技術・教師編(発問・指示・説明,板書・資料の提示など4節)」,第7章「実践の基礎2・学びを引き出す指導技術・児童生徒編(学び合う集団をつくるなど3節)」,第8章「設計の基礎1・学習目標の設定(学習指導案の構成,学習目標と学習課題など5節)」,第9章「設計の基礎2・深い学びを導く教材研究(深い学びと浅い学び,教科書・教材の役割など4節)」,第10章「設計の基礎3・主体的・対話的な学習過程(対話的な学習活動,主体的な学習活動など4節)」,第11章「設計の実際4・学びが見える評価方法(何のために評価するか,学習者による評価など5節)」,第12章「情報化への対応1・授業の魅力・効果・効率を高めるICT(思考を深めるICTの活用など4節)」,第13章「情報化への対応2・情報活用能力を育てる(情報活用能力の構成要素,情報モラルの指導など6節)」,第14章「情報化への対応3・これからの学習環境とテクノロジーの役割(学びの道具としてのテクノロジー,学校外の学びの変化など5節)」,第15章「授業の実施・模擬授業・研究授業の実施と改善(模擬授業・研究授業を記録・分析するなど4節)」,付録「教育の方法と技術のシラバス例,学習指導案のテンプレート」と分かりやすい構成になっている。(H&M)