ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:気になる1冊1230<データをもとに世界を正しく見る習慣>

教育研究所

書評:気になる1冊1230<データをもとに世界を正しく見る習慣>

著者:ハンス・ロスリング&オーロラ・ロスリング&アンナ・ロスリング・ロランド,訳者:上杉周作&関美和「ファクトフルネス10の思い込みを乗り越え,データをもとに世界を正しく見る習慣」 (日経BP社 本体:1800円)


 本書は,自他ともに認める「賢い人」ほど物事の判断時「思い込み」にとらわれることが多いという。そこで,世の中の出来事を「正しく見て,正しく判断する」ことができるようになるためにスキル「FACTFULNESS」を身に付けるべきだという。

 小学校算数科&中学校数学科に新しく「データの活用」という領域が新設されたが,もしかしたらFACTFULNESSが視野にあったのだろうか。
 まず「イントロダクション」が面白い。世界のことがどれだけわかっているか(世界の人口のうち極度の貧困にある人の割合は過去20年でどう変わったでしょうか,世界中の1歳児の中でなんらかの病気に対して予防接種を受けている子どもはどのくらいいるでしょう?など)13の質問があり,それに答え解説しながら著者流の世界の見方を学ぶことができる。

 では,10の思い込みを目次で見てみよう。第1章「分断本能"世界は分断されている"という思い込み」,第2章「ネガティブ本能"世界はどんどん悪くなっている"という思い込み」,第3章「直線本能"世界の人口はひたすら増え続ける"という思い込み」,第4章「恐怖本能"危険なことを恐ろしいと考えてしまう"思い込み」,第5章「過大視本能"目の前の数値が一番重要"という思い込み」,第6章「パターン化本能"一つの例がすべてに当てはまる"という思い込み」,第7章「宿命本能"すべてはあらかじめ決まっている"という思い込み」,第8章「単純化本能"世界はひとつの切り口で理解できる"という思い込み」,第9章「犯人捜し本能"誰かを責めれば物事が解決する"いう思い込み」,第10章「焦り本能"いますぐ手を打たないと大変なことになる"という思い込み」,第11章「ファクトフルネスを実践しようーファクトフルネスの大まかなルール」,「おわりに」などで構成されている。

 また,巻末の「脚注」は,詳細に解説してあり大変助かる。さらに,深く探究したい人にとって,出典(英語)が役立つであろう。(H&M)