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書評:小島宏の気になる1冊その552

梶浦真著「小中学校編Ⅰ アクティブ・ラーニングの時代の「振り返り指導」入門―「主体的な深い学び」を実現する指導戦略―」(教育報道出版社 本体:815円)

 主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)に関心が高まっている割には,具体的にどうすればいいのか,肝心の子供のところに近づかない議論に終始している感が否めない。
 著者は,「主体的」で,「対話的」で,「深い学び」で,重要なことは,子供の「深い学び」を実現するために,授業の終末段階における「自らの学習活動を振り返って次につなげる,主体的な学びの過程が実現できているかどうか」が,一層重視されているかどうかすなわち「振り返り学習」が重要だと看破している。

 一般的に行われている「学習のまとめ」と「学習を振り返っての感想」を大きく超えて,子供たちが「学習して理解し,身に付けた知識・技能,これらを活用して新たな課題発見・解決につなげ,新たなことを学び取っていける」ようにしていくことが求められている。著者の「振り返り学習」の価値づけ,具体的方法などに学び,目の前の子ども達を「アクティブ・ラーナー」にしていきたいものである。

 研修サークル,校内研修などのテキストとして活用し,アクティブ・ラーニングの中核をなす「深い学び」を実現することについて,学び取っていただきたい。

 内容は,「1.高まりを見せる振り返り学習への注目」,「3.アクティブ・ラーニングの視点が導入され,変化する振り返り学習のねらい」,「8,目指す資質・能力としての振り返り能力」,「16.振り返り学習の深さと階層」,「20.主体的・協働的な振り返り学習」,「30.振り返り学習をデザインする」,「36.学力の個人差を縮め・生かす振り返り学習」などで構成されており,役立つ情報が「図表で見える化」されていて,「読んで納得」でき,授業づくりの「ヒント」満載の一冊である。個人的には,「8.振り返り学習の持つ意味と価値―浅い振り返りと深い振り返りをつなぐ―」で,レベル1<知識陳述・伝達・再生>,レベル2<知識構築・最構成>,レベル3<知識創造>が,新鮮かつ強烈で,「目から鱗」の心境を久しぶりに味わった。