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書評:小島宏の気になる1冊その658

佐藤愛子著「九十歳。何がめでたい」 (小学館 定価:1200円)

 要するに,高齢者が,世の中の技術的進歩についていけず,戸惑っていることを,軽妙に綴ったもので,気楽に読める本である。

 老妻の母親は,105歳になる。「外へ行くのが嫌だ。長生きにあやかろうと,握手攻めにあうから・・・」「デイサービスもつまらない。若いもん(相手は80歳くらいらしい)とは,話が合わん」「どこを見ても,知っている人が見当たらない。同級生もわし一人になってしまった」という具合に,ぼやいている。まあ,そんなこと言わないで長生きをしてくださいと,話し相手になっている。

 ところで,小4の孫が,分からないことがっても,最近はじーじ(私)に聞かず,パソコンやスマホを使って調べてしまう。「活字で書いてある本で調べないと,駄目だ」と負け惜しみを言っているが,「昔の人は,慣れた方法でやった方が,精神的に落ち着くでしょう」と軽くいなされてしまう。

 そんなことで,本書「こみ上げる憤怒も孤独(トイレで水の流し方分からず紐を引いたら大騒ぎ」」「我ながら不気味な話(鳴き声がうるさいとほえないように躾けられる,レジで袋がいらない時は「NOレジ袋」というカードを出す。なんで,犬が泣いてはいけないのか,袋はいらないと口で言ってはいけないのか)」「思い出のドロボー(嘘の身の上話に同情して泊めて,現金を盗られた)」など29話を読んで,著者のボヤキに付き合ってみたらいかがですか。「え!まだ40代。ごめんなさい」,でも,高齢者理解のために「どうぞ!」。