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書評:小島宏の気になる1冊その669

文:崔徳煕・絵:姜境孝「無人島のサバイバル」 (朝日新聞出版 本体:1100円)

 後期高齢者の私の子供の頃は,学校が休みの日は,友達数人と海岸へ遊びに行くのが常だった。畑からトマトやキュウリをもいで,それを海に放り込んで置き,塩水に浸かったのをおやつ代わりに食べた。
 
マッチと釣り針と釣り糸(テグス)とナイフ(当時は,ナイフでいたずらをしたり,人を傷つけたりする子供は一人もいなかったので,当然のように誰もが所持していた)も持って行った。はじめに,貝を砕いて,あるいはフナ虫を捕まえて餌にして小さな魚を釣った。ナイフで,その小さな魚をさばいて,餌にして,さらに大きい魚を釣った。立木を集め,たき火をたいて,その魚を焼いて,みんなで食べた。それで満腹になり,その後またみんなで泳いだり飛び込んだりして遊んだものである。

 子ども向けの本書を読んで,幼馴染と海で遊んだことを思い出して至福の想いをした。

 ところで,今の子ども達に,この様な野性味があるだろうか。一人だけになった時,生きのびていくことができるだろうか。我が家の孫たちを見て,心配になることがある。海や山の宿泊生活を普通の体験学習に加えて,「生きること」「生き残ること」を重視した活動を行うことも必要かもしれない。東京学芸大学附属小金井小学校や武蔵野市公立学校の実践は,この意味で素晴らしいと思う。

 本書は,まさに,無人島に投げ出されたらどのように生き抜くかを綴ったものである。「家づくり」「飲み水探し」「魚釣り」「火起こし」「塩探し」「道具作り」など25章にわたって,サバイバルの仕方をマンガで面白く,分かりやすく解説している。実際のサバイバルはこんな生易しいものではないが,関心を持ち,野外活動などに参加しながら,少しずつ身に付けていくきっかけにはなる。親子で,楽しみながら読んでほしい1冊である。