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書評:小島宏の気になる1冊その697

池谷孝司著・小島慶子解説「スクールセクハラ―なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか」 (幻冬舎文庫 本体:600円)

 学校の危機管理の中で,最優先は,子供(幼児,児童,生徒,学生)の生命と身体の危機管理である。これが保障された上に,質の高い教育の保障が求められる。

 しかしながら,事故,体罰,いじめ,セクハラ,病気・けがなど,子供の生命・身体を脅かす事案が後を絶たない。特に,スクールセクハラは,頻繁に報道されている。それだけ子供たちは危機に瀕しているということである。個人的には,(もちろんすべての人間に対してであるが)子供とその保護者を対象にしてはならないと,教職員に強く指導し,厳しく求めてきたので,本書の主張を当然と受け止め,文部科学省・教育委員会,学校(管理職,教職員,専門スタッフなど)は,何とかすべきだと思った。根絶させるための行動を具体的に起こすべきだと考える。

 「はじめに(被害者との出会いと本書執筆の意図)」,第1章「M教師(被害者と著者が,M教師を懲戒免職にまで追い込む葛藤と過程)」,第2章「特別権力関係(周囲から真面目とみられていた担任教師が小学生女児とのスクールセクハラに溺れてしまった顛末)」,第3章「部活動(部活動の顧問教師による体罰や女生徒へのスクールセクハラ,その教師は教頭に昇任...最終的には懲戒免職)」,第4章「二次被害(担任教師から女子高生への♡メール&校長までセクハラ,そして逆に被害者に嫌がらせ...)」,第5章「届かない悲鳴(具体的なケースに基づいた加害教師と校長の無責任な...)」,「終わりに(わいせつ教師は今でも教室で子供を教えている,これでいいのか...)」,「文庫本あとがき(調査を素人の校長に任せず第3者委員会に...)」,小島慶子「解説(それは犯罪だ,あなたはノーと言っていい...)」で構成され,スクールセクハラが,いかに不当(犯罪,人権侵害,教育の本質に背く行為)で,子供たちの心身と生き方を破壊しているか,改めて教えてくれる。関係者は,本気で考え,行動すべきことが伝わってくる。