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教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その673

妹尾昌俊著「変わる学校,変わらない学校―学校マネジメントの成功と失敗に分かれ道」(学事出版 本体:1800円)

 変わる学校も,変わらない学校も,どちらもたくさんある。その方向性が問題である。学校運営も教育活動も成果を上げていて,保護者や地域からの信頼も厚い学校が,リーダー(校長)やスタッフ(教員)が代わり,2~3か月で,「どうも最近のA校は...」と大きく「変わる(下降する)学校」は少なくない。

 一方,「また,今年も...」と,保護者や地域からあまり期待されていなかった学校が,新しく異動してきた校長や教員の地道な努力で,半年もたつと,「最近,B校の生徒が変わったね」「学校に活気が出てきた...」と見直される「変わる(改善・進歩する)学校」もある。

 ところで,C校は「子供が生き生きと活動し,質の高い教育」と「教師が前向きに活動している学校運営」が行われ,それが伝統になっていて,保護者や地域から全幅の信頼を得ている「(充実した教育活動と学校運営が)変わらない学校」もある。

 逆に,D校は,生徒の生活規律は乱れ,授業崩壊が日常化し,教師集団もまとまりがない。このような状態が「変わらない学校」もある。ところで,あなたの学校が上記のどのタイプに属しますか?

 著者(野村総研の主任研究員)は,「多くの管理職や教職員,関係者が頑張っているのに,...なぜ,学校は変わらないのか?」という視点から,次のことに焦点化して,「変わる学校づくり」への提言をしている。

○管理職や教職員が個人としては優れているが,チーム学校として力を発揮できていない。
○うまくいっている(変わる)学校と停滞している(変わらない)学校を比較分析し,改善のポイントを明らかにする。

 内容は,第1章「イントロダクション・学校教育の悪循環と好循環(4つの観点から詳述)」,第2章「学びのプロとしての教職員と学習する学校(6つの観点から詳述)」,第3章「組織になり切っていない学校(7つの観点から詳述)」,第4章「学校づくりの成功と失敗の分岐点(12の観点から詳述)」,第5章「多忙化から日本の教育が見える(5つの観点から詳述)」,第6章「組織力を高めるデザインと実践1到達目標の共有(10の観点から詳述)」,第7章「組織力を高めるデザインと実践2プロセスの設計(13の観点から詳述)」,第8章「組織力を高めるデザインと実践3チーム・ネットワークづくり(8つの観点から詳述)」となっている。

「企業と学校は違う!」などと言うことは,一旦横に置き,素直に耳を傾けてみると,学ぶべき事柄,取り入れることが,数多く見つかる。