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書評:小島宏の気になる1冊その676

西岡加名恵・永井正人・前野正博・田中容子&京都府立園部高等学校・附属中学校編著「パフォーマンス評価で生徒の「資質・能力」を育てる」 (学事出版 本体:2000円)

 中教審答申(平成28年12月21日)では,パフォーマンス評価を取り入れてて,ペーパーテストにとどまらない多角的・多面的な評価を提言している。これを受けた新学習指導要領(平成29年3月31日告示)では,総則で「学習評価の充実(良い点や進歩の状況などを積極的に評価し,学習の意義や価値を実感させる。評価の場面や方法を工夫し,学習の過程や成果を評価し,指導の改善や学習意欲を向上させる。)」と示している。

 ところで,パフォーマンス評価との出会いは,橋本重治の「教育評価法概説(1959年版)」であった。それによると,パフォーマンス評価とは,「実際にできるかどうかで評価する(イギリス型)」と「ペーパーテスト以外の一切の評価(アメリカ型)」であったと微かに記憶している。

 実際に,学んだのは,東京都Sの校内研究(算数科)に関わった時である。パフォーマンス課題による授業づくり,パフォーマンス評価の評価基準(ルーブリック&作品などの事例),パフォーマンス評価の実際を松下佳代先生から直接ご指導いただいた。

 ところで,本書は,「学ぶ力を育てる新たな授業とカリキュラム」を校内研究として追究した成果を整理し,公表したものである。

 これから,パフォーマンス評価を活用して,生徒に「資質・能力」を確実に育てたいと考え実践したい学校にとって,指針となる1冊として勧めたい。

 第1章「資質・能力を育てるカリキュラム作り―パフォーマンス評価の進め方」(資質・能力の3つの柱,学ぶに向かう力・人間性の涵養,思考力・判断力・表現力を育てるパフォーマンス課題,生きて働く知識・技能の保障,カリキュラム・マネジメントの重要性),第2章「研修力を学びの場に―課題研究プロジェクトの取組」(1.自ら問を持ち考える生徒に育てたい―課題研究の取組,2.事前事後学習を教科が担当する(国語,国際理解,理科,音楽,人権など8事例),コラム①思いがけない生徒の姿),第3章「自己実現への意欲が学ぶ力に―英語科の取組」(1.自分の思いを発信する,2.すべての生徒に英語力を育てる―教育目標を明確に,3~7省略,8.英語教育実践―パフォーマンス課題を使って,「英語で落語」「私が尊敬する人」「スピーチを作る」など8事例),第4章「生徒が主体的に研究に取り組むために―理科の取組」(1.理科課題研究―正解があるかどうかわからないものを追究する,2.理科における実験学習と反転授業,3.限られた時間に取り組ませるパフォーマンス課題,コラム②分析の先に待っているエキサイティングな瞬間),第5章「広く世界を見渡しながら,自己理解に努める―京都国際科の取組」(1.専門教科としての国際理解,2.キャリア教育としての国際理解教育)と内容が濃い。

 本書は,中・高校が中心であるが,小学校のカリキュラム編成と授業づくりを考えるときのヒントにもなる。