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教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その704

「教育ジャーナル2017年7月号」(Gakken 本体:500円))

 幼児教育と小学校教育のスムーズな接続ということが言われて久しいが,具体的なレベルでの提案や実践紹介は決して多くはない。理論先行で実践が耕されていないのである。

 また,いじめの早期発見・早期対応と言うことは,全ての教育委員会が管下の学校に指導し,校長の学校経営案や担任の学級経営案,生活指導の目標などに「いじめをしない指導」「いじめの早期発見と即対応」が盛られている。ところが,それがうまく機能しない学校があり,痛ましい結果を招いている。時として,保護者や当該の子供が「サイン」を示したり,「いじめ」の訴えをしたりしても,学校は真摯に受け止めることなく「自殺」と言う最悪の結果になっても,最初は「そのようなことはない」と否定し,批判が大きくなると「再確認」することになり,結局「いじめはあった」と認めて,「再発防止に努める」という,お決まりの謝罪会見となる。虚しくやり切れない。何とか,この繰り返しを断ち切りたいものである。

 本誌は,この2つのことにスポットを当てて,具体的に提言している。自校の実態に応じて,クリティカル・リーディングして活用されたい。

 第1特集は,幼児教育と学校「幼児教育と学校教育との接続が,次期学習指導要領に明記された!―2校の実践を参考に,スタートカリキュラムのつくり方―」である。教育ジャーナリスト渡辺研「2校の実践を参考に,スタートカリキュラムのつくり方」,実践例「スタートカリキュラムのつくり方①仙台市立広瀬小学校の例」&「スタートカリキュラムのつくり方②横浜市立鶴見小学校の例」と,具体的な提案と実践報告である。

 第2特集は,いじめ根絶「いじめを早期に発見し,初期対応を誤らないために―宮城県の「いじめ対応の手引き」―」である。教育ジャーナリストの和田成は,「いじめの根絶は現実的には難しい」と分かっているが,「どうしても,いじめが起きるのだったら」「被害者が傷つかないようにしたい」,そこで,「いじめ対応の鉄則―早期発見・早期対応,継続的な関与」とりわけ「初期対応を誤らないように」,教師の意識や学校のチーム対応力を向上させることを強く訴える。