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書評:小島宏の気になる1冊その682

常光徹著「しぐさの民俗学」(角川文庫 本体:1080円)

 学校教育法第2条(学校教育の目標)の第5項に「伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」にあるが,中教審答申(平成28年12月)及び新学習指導要領(平成29年3月告示)でもこのことを重視し,目標や内容として示している。

 このことと民俗学は関係あると思い込み,本書を購入して読んだ。私には,関連があるとは言う判断力を持ち合わせていないが,この本の内容そのものは,日本の文化(?)を考えるいい機会となったことは確かである。子供の頃の祖父や母親の言葉やしぐさの中ににそのようなことがあったからである。

 今でも時折,高齢者の言動の中にそれを見ることもある。子供がよくする「ゆびきり・げんまん」もその一つだそうだ。内容構成は次のようになっている。

 序「俗信と心意」,第2章「息を吹くしぐさと吸うしぐさ(2節)」,第2章「指を隠すしぐさと弾くしぐさ(2節)」,第3章「股のぞきと狐の窓(股のぞきとと異界,股のぞきと袖のぞきなど4節)」,第4章「後ろ向きの想像力(妖異と接触する方法,振り返る野禁忌など3節)」,第5章「動物をめぐる呪い(祟りと摂食行為など2節)」,第6章「エンガチョと斜十字(斜十字の民族など2節)」,第7章「クシャミと呪文(ハナヒからクサメへなど2節)」,第8章「1つと2つの民族(一声と二声の俗信など2節)」,第9章「同時に同じ現象をめぐる感覚と論理(同時に同じことを言ったときなど2節)」,終「しぐさと呪い」。

 当たり前と思っているしぐさ,奇妙だと見ているしぐさ,どんな意味があるかと深く考えず行っているしぐさ等々に,それなりの意味や根拠,ことの起こりのあることが分かって面白かった。その中でも,ちょっとした地域のしぐさの違いにも,それなりの根拠のあることが分かり,前よりも親しみをもって見つめることができるようになった。