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書評:小島宏の気になる1冊その684

笹原宏之著「謎の漢字―由来と変遷を調べてみれば」 (中公新書 本体:800円)

 本書のカバー裏に,「スマホやパソコンでは,娵,啌,娚などの不思議な文字を打つことができる。でも,どう読むのか,どう使うのかはわからない」というようなことが書いてある。ガラ携とワード入力しかできない自分には,読み方の分からない「娵,啌,娚,娵」という文字を打つことができるのか不思議である。(ちなみに,娵の読みはシュ,意味は帝嚳の妃の名,美人の妻。 娵訾はシュシと読み星座の名。他の読みは,啌はコウ,娚はナンあるいはメオトである)

 しかし,そんなことはどうでもいいことで,漢字はものすごく奥が深く,それら一つ一つに意味,いわれ,歴史・由来など色々あることが分かって,何か充実した気持ちになった。これからは,漢和辞典にだけ頼らずに,インターネットの検索,WEBの活用,図書館の奥の方にある事典や資料などによって,漢字を楽しもうと思うようになった。本書をポケットにでも入れておき,通勤途中の数分間を小刻みにつないで,少しずつ読んでみたらいかがでしょうか。

 第一部「日本の地名・人名と謎のJIS漢字」(嬲ウワナリがJIS漢字に入った理由,和製漢字鯲ドジョウの出所など13章),第二部「海老蔵は鰕蔵か」(歌舞伎界のエビの漢字の変転と背景,エビの漢字から分かったことなど7章),第三部「科挙と字体の謎」(令―誤字とは何か,科挙が教えることなど17章),もっと深く学びたい人のために,巻末に「主要参考文献」がついている。

 日本の1945年以前の漢字と,その後の漢字では字体がかなり異なっている。省略字が普及した場合,難しいので易しくした場合と,色々のようだ。「蔵」という字も,小学校のはじめの頃は「藏」と習ったが,その後すぐに「蔵」でよくなった経験がある。また,現在の中国北京で使われている漢字(簡体字)と,台湾台北で使われている漢字(繁体字:昔のままの漢字)も異なっている。