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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その690
西川純編著「学び合いで始めるカリキュラム・マネジメント:学力向上編」(東洋館出版 本体:1800円)
著者は,「あなたの学校は,カリキュラム・マネジメントをやっていますか?」と問われたら,「やっています」と応える学校が多いという。「何をやればいいのか」という発想なら「今のままでいい」ということになる。カリキュラム・マネジメントは「何を達成すればいいのか?」と,視点を変えなければならないと指摘している。
アクティブ・ラーニングについても,対話的活動(話合い活動)を取り入れればよいというレベルのものではなく,達成すべきものに着目すれば「認知的,倫理的,社会能力,教養,知識,経験を含めた汎用的能力の育成」にあるということの再認識を求めている。そして,今までは,教科で「知」,特別活動や道徳で「徳」,体育で「体」を担当ししていて,教科学習では「徳」を育てなくてもよかった(注:実際は,各教科等の中で,従来から学習指導要領に明記されており,教科等の特性に応じて道徳教育を行うようになっていて,実践されている)。これでは「深い学び」にならない。これが(知徳体が一体的・関連的に育成されること)が,従来の教育と劇的に違う。これを学校は受止め,実践することが求められ,実現することがカリキュラム・マネジメントだという非常に分かりやすい主張である。
本書は,上越教育大学教授西川純の指導の下,青森県八戸市立長者中学校(伊藤有信元校長,石毛清八校長,教職員・保護者等)の,カリキュラム・マネジメントとは教師集団の深い学びであり,これが生徒の深い学びを実現するという発想で実践した「事例提案」である。中学校でチーム学校として,これだけのことを日常化したことは素晴らしいことであり,各小・中学校の学ぶべき点は少なくない。
内容は,<理論編>第1章「カリキュラム・マネジメントとは」(何をすればいいのではなく何を達成するのか,カリキュラム・マネジメントを実現できるのが深い学びであるなど6節),<実践編>第2章「カリキュラム・マネジメントへの取組(カリキュラム・マネジメントに取り組むことの困難,学び合いによるカリキュラム・マネジメントなど3節)」,<実践編>第3章「カリキュラム・マネジメントの実現―教職員たちの声(教職員の感じたカリキュラム・マネジメント,子供ってすごい,学び合いは教科指導×生徒指導×特別活動である,管理職から見たカリキュラム・マネジメントなど8節)」,<実践編>第4章「学校職員・生徒・保護者が感じたカリキュラム・マネジメント(学校職員から見た学校の変化,生徒の声など5節)」と,事実が多くを教えてくれる。