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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その693
鳫咲子著「給食費未納―子どもの貧困と食生活格差」(光文社新書 本体:740円)
出されたものを食べるだけで好き嫌いを言っていられない時代に育った高齢者,給食が程々においしくなってまあまあ満足した中年,物が溢れて好き嫌いや好みが言えた若い世代,食物アレルギーなどに子供も教師も悩まされる現在と変遷してきた。いつの時代も,あれこれあったかもしれないが,子供たちは,おかわりをしたり,秘かにグループ内でおかずを交換したりして,楽しんでいたものである。
ところで,給食費の未納が,小中学校で,話題を呼んでいる(問題になっている)。理由は様々である。「A:義務教育だから無償にすべきだ!」「B:生活が苦しくて払えない」「C:経済的に困っていない(裕福)のに,正当な理由がなく払わない」「C:子どもの養育に無関心又は怠惰」「D:特別な理由があって,公的支援を申請することができず,困窮している」「E:払わないと,滞納を敢て放置している」等々である。
本書は,給食未納問題を,自分のことと考えて,子供の貧困問題や福祉問題,義務教育とは何かを考えるきっかけとした。その意味で,一読をお勧めする。
内容は,第1章「払わないなら食べさせない?(14節,未納にどう対処すべきか)」,第2章「給食費未納は子供の貧困のシグナル(14節,求められる関係機関の連携)」,第3章「欠食児童から始まった学校給食(16節,給食による欠食児童支援の歴史)」,第4章「休職格差と食生活格差(11節,中学校給食実現の必要性と課題)」,第5章「完全給食実現後の子供たち(8節,北九州市における検証から)」,第6章「子供の食のセーフティネット(7節,韓国における無料化を踏まえて)」,「おわりに(著者の体験的なあとがき)」,で構成され,「脚注」「参考資料」「資料」とさらに調べたい場合の配慮もされている。