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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その694
山口謡司著「語彙力がないままに社会人になってしまった人へ」(ワニブック 本体:1400円)
大人の話しているのを聞いていて,「あれ!」「おかしいぞ?」などと思うことが少なくない。TV「ながら族」なので,アナウンサー(偏見ではなく統計的に,特に女子アナ)や内容で勝負しないタレントの言葉遣い,表現がとても気になる。そんなことで,本書を読み込んで,「人の振り見て,我が振り直せ」を実行することにした。
以上のようなことを踏まえてか,新学習指導要領の国語科でも,多くの語彙(単語の総体,Vocabulary)を習得するよう求めている。今の日本人の「語彙の乏しさ」と「表現の貧しさ」に,中教審委員や学習指導要領作成者が,危機感を持ったからかもしれない。
著者は,本書1冊の内容を会得すれば,社会人の語彙の基本は大丈夫だと言っているが,語彙の大切さが分かったら本書をヒントにして,日本語の語彙と表現に関心を持ち続けていけば,社会人として,教師として,更に「語彙力」を身に付けることができるだろう。 本書の面白さは,目次を眺めただけで分かって頂けよう。紹介しよう。
第1章「この人できる!と思われるための語彙力は,誰にも身に付けられる―言葉によって自分の評価を下げるのはもったいない!」(8つの節),第2章「最低限知っておきたい知性と教養を感じさせる語彙―できる職員の受け答え,言葉の常識,感謝,あいさつ」(6つの語彙),第3章「会議,プレゼン,交渉,打ち合わせで結果が出る便利な語彙―伝え方がうまい人,説明が分かりやすい人,理解力が高い人」(8つの語彙<註:8つのうちの3番目に新学習指導要領で算数科で新しく扱われる6年の近似値・中央値・平均値・最頻値を取り上げている>),第4章「よく聞くけど,しっかり意味が分かっている人は少ない語彙―同音異義,似ているもの,年配の人・地位がある人が使う語彙は知っておかないと恥をかく」(8つの語彙<註:忖度も取り上げてある>),第5章「そもそも間違って覚えている可能性が高い語彙―社会人になったらこの間違いは許されない!勘違いを正しいと思っていないか?」(7つの語彙),第6章「心の状態をうまく表す,伝えるための語彙―ポジティブさもネガティブさも併せ持つのが社会人」(9つの語彙),第7章「社会人としての評価をもっと上げる語彙―一段上のレベルの言葉を身につけ使いこなす」(13の語彙),終章「こうすれば,語彙力は自然に高まっていく―数を増やし質を高めるための技」(8つの節)と,読み物として読んでも楽しめる。