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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その695
杉江松恋著「ある日うっかりPTA」 (角川書店 本体:1300円)
「PTAとは何か?」,「学校と保護者の協力・連携とは何か?」と,ある時ふっと思った人は少なくないだろう。本書は,PTAなんか毫も関心を持ったことのない金髪・ヒゲ・サングラスのフリーライターが,ひょんなことからPTA会長になってしまった話。
そして,「本当か?」,「こんなことがあっていいのか?」「こっちのほうが筋だろう?」などと素朴に思った事柄を,次々と改善していく体験談である。だから,TVドラマでも見ているような痛快な気持ちにしてくれる。ただし,これは,あくまでもこの公立桜庭台小学校(仮名)及びその周辺のことである。
<目次>第1章「PTAなんて別世界の出来事と思ってた」,第2章「俺の金髪に触るなよ」,第3章「教育者なんてガラじゃない」,第4章「みんなでチームになりましょう」,第5章「がんばらない,をがんばろう」,第6章「うちのPTAだけ変じゃないですか?」,第7章「みなさんの力を借りたいんです」,第8章「未来の行事より今が大事さ」,第9章「PTA,辞めちゃだめなんですか?」,第10章「PTAはちゃんと卒業すべきものだ」と,参考になる。
いちゃもんを付けるわけではないが,拙い体験から本書と異なる面のいくつかを紹介しておこう。PTA会費が年間3000円だと言うが,A校やB校では確か50円×12か月=600円だった。周年行事には,教育委員会が予算を付け,寄付金は募ってはいけないことになっていて,式典も記念文集も公費(PTAや卒業生・地域などから記念品の学校への寄贈は廃止)で賄った。祝賀会は,教職員や保護者,来賓(首長,教育長,議員,地域有志など)など全ての参加者は,会費制(地域の複数の商店の協力で実費程度)で行った。
また,PTA会長は教育委員会から任命されたと言うが,これは私的団体の人事なので,PTA総会で承認されればそれでよかった。「PTA会長は,校長の妻のような者」と校長から言われたと言う(著者も納得していたようだが)が,校長とPTA会長は上下や夫婦関係の様なものでなく,むしろ同格で,このような従属関係を口にするとは驚いた。(この10行の内容は,後期高齢者の記憶に基づくBOKE情報なので信頼度ゼロ。)