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書評:小島宏の気になる1冊その696

ベネディクト・キャリー著・花塚恵訳「脳が認める勉強法「学習の科学」が明かす驚きの真実! How We Learn」 (ダイヤモンド社 本体:1800円)

 本書は,ニューヨークタイムス社のサイエンスレポーターの著者が,多くの脳科学者への取材で得た知見を,最新の記憶法・勉強法としてまとめたものである。学習法に関する多くの著書のある東京大学薬学部池谷裕二教授(実は,私はファンである)「記憶研究の専門家である私が舌を巻いた。本書は勉強に関する脳科学本の決定版だ。正確かつ有益な情報が詰まっている」と,絶賛しているので,読むことにした。

 孫が4人いるが,一向に勉強しない。「勉強は大嫌い」と断言してはばからない孫もいる。孫のために,「そんなにいい勉強法」があるならと,大きな期待を持って読んだ。冒頭に「努力だけでは報われない!」とあったので,努力しないで報われる方法があれば,孫たちに教えてあげたいと,ジジバカ丸出しで,読み進めた。

 内容を紹介する。個人的には,第4章と第5章,第6章と第7章の一部が気に入ったので,孫たちに話したいと思っている。

 「はじめに―余白を広げる」,Part1脳はいかに学ぶか:第1章「学習マシンとしての脳―記憶という生命現象を解き明かす(脳には記憶を扱うシステムが2種類あるなど9節)」,第2章「なぜ脳は忘れるのか―記憶のシステムを機能させる忘却の力(記憶には保存と検索の2つの力があるなど9節)」,Part2記憶力を高める:第3章「環境に変化をつける―いつもの場所,静かな環境で勉強するのは非効率(気分は学習にどう影響するのかなど10節)」,第4章「勉強時間を分散する―いちどに勉強するより分けたほうが効果的(分散学習は一夜漬けに勝る,難しい題材を覚えるときの勉強法など8節)」,第5章「無知を味方にする―最善のテスト対策は自分で自分をテストすること(テスト対策のスキルを高める自己テスト,知らないことをテストする事前テストなど11節)」,Part3解決力を高める:第6章「ひらめきを生む―アイディアの孵化が問題解決のカギ(問題解決の4つのプロセス,1歩引いて周囲を見回すなど11節)」,第7章「創造性を飛躍させる―無から有をつくりあげる抽出のプロセス(抽出が創造性を飛躍させる,喉が渇いていると何が目に入るのかなど9節)」,第8章「反復学習の落とし穴―別のことを挟むインターリーブの威力(変化を取り入れた練習が本番の応用力を高めるなど9節)」,Part4:無意識を活用する:第9章「考えないで学ぶ―五感の判別能力を学習に活用する(自分一人でも知覚は鍛えられるなど8節)」,第10章「眠りから学ぶ―記憶を整理・定着させる睡眠の力を利用する(睡眠をとると正答率が上がるなど8節)」,「おわりに―脳は狩猟採集を忘れない」,付録「学習効果を上げるための11のQ&A」,「原注」&「索引」という構成である。