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書評:小島宏の気になる1冊その705

教育実践臨床研究「目の前の子どもと向き合う―教師として欠かせないもの―」 藤沢市教育文化センター 非売品 URL://www1.fujisawa-kng.ed.jp/kyobun-c/

  神奈川県藤沢市の教育研究や指導資料が,学校・教師の教育実践に貴重な理論と実際の情報を提供してくれるという意味で,高く評価されている。

 本書は,はじめに「今回の紀要は,『視点』『実際』『広がり』の3部構成となっています。また,リフレクション(注:reflction 熟考,反省,内省,振り返り)研究に取り組んで20年を迎える節目の年であることから,限定の確認作業も行われました。本研究は,授業改善と教師の成長に視点を置き,日々の授業で大切にしていかなければならないものを見つけ直させてくれます。教師として,目の前の子どもとしっかり向き合い,自分の授業に真摯に向き合うことが,さらなる成長につながると考えます」とあり,関係者の「子どもに質の高い教育を保障する」という熱い思いが伝わってきた。

 市立小中学校の研究員の先生方6人及び研究員OB12人で地道に研究・実証したもので,内容構成は次のようになっていて,「授業研究」や「授業づくり」,そして臨床研究のモデルとして大変参考になる。

 序「私たちが授業リフレクションを必要としたわけ―教育実践臨床研究の原点を振り返る」江原敬。第1部「臨床的であるということ―教育実践臨床研究の視点」第1章「授業の流れをつくるもの」千葉県立保健医療大学教授井上裕光,第2章「教師の成長と授業リフレクション」中村浩,第3章「目の前の子どもと向き合う」谷合弘州,第4章「教育実践臨床研究のパラダイム」目黒悟。第Ⅱ部「見えることから授業の再構成―教育実践臨床研究の実際」第1章「藤沢の謎の工場を調べよう!―小学校5年社会科」海保雄&コラム「海保先生の目指す「社会が楽しい」と思える授業!」小林健太朗,第2章「歴史の見方を広げよう―小学校6年の社会科」佐藤遼&コラム「社会科で!人を育てる」千葉俊介,第3章「社会科の教材研究について考える」田中明,第4章「学ぶ実感の体験」慶應義塾大学教授鹿毛雅治。第Ⅲ部「仲間と共に授業から学ぶ―教育実践臨床研究の広がり」第1章「校内研究における授業研究の取り組み―藤沢市立六会小学校」小林健太朗,第2章「海保実践・佐藤実践に触発されて―小学校5年社会科」鷹野全宏。講師:井上裕光,鹿毛雅治,横浜国立大学教授高橋和子。担当:目黒悟,平川佳子,磯上恵。