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書評:小島宏の気になる1冊その707

奥島透著『日本一小さな航空会社の大きな奇跡の物語―業界の常識を破った天草エアラインの復活』(ダイヤモンド社 本体:1500円)

 経営が行き詰まり明るい未来が感じられない子会社を,優れたリーダーシップで,見事に復興させた社長の自信満々の体験談である。

 その中で,厳しい中小企業の復興を目指す経営者に3つのヒントを示している。詳細は,本書を読んでもらうことにして,さわりを紹介しよう。

 ヒント1:現在の人心・業務・資金を掴むということ。ヒント2:攻めの経営(チャレンジ)をすること。ヒント3:社員を大事にすること。

 前任の社長が部屋に閉じこもり,現場に出向かなかったことを批判し,著者は努めて現場に赴き,社内をうろうろしながら仕事に加わり,口を出し,自分から「報連相」を心掛け社員と会話をしたそうである(第6章会社再建で学んだこと)。その中で,今までの経験が,事情の異なる場には必ずしも当てはまらないことを実感したそうだ。

 私は会社勤めの経験はないが,社員を責めず(自分も役割と責任を果たす),過大に求めず(できることを誠実に実行する),現場感覚で「稼げることは何でもやろう(但し,儲かる事だけと限定して発想を封じ込めない)」「自社らしい事業・サービスをやろう(企業の使命を自覚しながら)」と,前向きに取り組み,社員の前向きさを醸成したことに学ぶことが多かった。

そう言えば,似たような人を思い出した。新規採用教員時代に出会ったM校長を思い出した。暇さえあれば,校内をウロウロし,子どもと教職員と教育環境を観察し,状況を見取り,必要な手を打っていた。校内巡視の際は,ペンチ,ドライバー,釘抜き(金槌兼用)を手にして,子どもが怪我をしないように修理していた。若い教職員の素朴な意見や提案,相談事や愚痴にも耳を傾けてくれた。そして,困難校を3年間で見事に普通の学校に再建した。著者の会社再建にどこか似ていた。