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教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その708

編集長:藤井大輔「授業づくりネットワーク№23通巻331号人工知能(AI)と授業」 (学事出版 本体:1400円)

 AI(人工知能Artificial Intelligence:コンピューター上で人間と同様の知的な情報処理を行うこと)時代の到来によって,現在の職業の60%以上がなくなり,知識・技能の授業に人間の教師は必要なくなる。そして,AI自体が,人間の直接関与なく学びを広げ,深め,発展させていく深層学習(Deep Learning)が可能になり,人間の存在自体が問い直される状況である。

 ところで,囲碁や将棋,チェスではAI対人間の勝負があり,あるいはAIを人間が活用し協働して物事の判断や方策を行っている場合もある。

 では,AIが学校教育,授業をどう変えるのであろうか? 今号の特集は,まさにこのことにスポットを当て,「学校教育とは何か?」,「授業とは何か?」,「教師の役割は何か?」という根源について考える機会を与えてくれるものとなっている。

 巻頭「人工知能(AI)が汎用化された時代の学校教育とは」では,東大先端科学技術研究センター教授中邑 賢龍(学校に馴染まないユニークな子どもたちのICT教育で研究と実践で実績がある)さんと,東京都杉並区高井戸東小学校教諭佐藤和紀(1人1台のタブレット使用で情報活用能力を育てる授業実践で実績がある)さんの対談がある。クリティカル・リーディングをすれば,AI時代の学校教育の在り方を考える際のヒントが得られる。

 特集は,「人工知能(AI)と授業」で,藤川大祐「テクノロジーの進化と授業づくりイノベーション」,新田克己「人工知能(AI)とは何か」,山口高平「クラスルームAI-教諭・ロボットの連携授業実践」,阿部学「IOT(モノのインターネット)について学ぶ授業の開発―「半歩先の未来」をどう教えるか?」,金子暁「変革期の学校教育とテクノロジー広尾学園のキャリア教育」,山下芳一「人工知能ロボットが授業をサポートする小学校」,鈴木雅美「ICTで協調学習を可視化する!」,服部正嗣「子どもの興味,発達段階に合わせた最適な絵本がわかる!」,小川修史「人工知能の観点から見る自閉症スペクトラムの世界」,宇井吉美「根拠のある介護をテクノロジーで支える」,落合陽一「『魔法の世紀』の学習はどのようにデザインされるのか」と,充実している。

 その他に,新学習指導要領で小学校必修になったプログラミング教育に関連した,トレンドレポート神谷加代「プログラミング教育最前線!」もある。