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書評:小島宏の気になる1冊その722

恩田陸著「蜜蜂と遠雷」 (幻冬舎 本体:1800円)

 30年来の友人から本書を進められた。タイトルと,2017年直木賞(文学に一家言を持つ専門家が選んだ)&全国書店が選んだ2017年本屋大賞(図書販売を生業とする一般市民(店員)が選んだ)をダブル受賞したということなので,購入して読んだ。5百ページ超の大作なので,読みきるのに1週間ほどかかった。

 主人公は,音楽コンクールに参加し,それなりの成績で認められ,その道に入って成功した。順調に行っていたが...,やめて,普通の社会人になる。それから,また,音楽の世界に戻って,音楽活動を続ける。

 様々な曲が登場し,さりげなく専門的な解説がついていて,そういう曲だったのかと改めてその良さが分かったように感じた。そして,音楽は,専門家ぶらずに,素人っぽく楽しめばいいのだと悟った。

 目次だけでも紹介しよう。「エントリー(ノクターン,トレモロ,ララバイ,ずいずいずっころ橋,ロッキーのテーマなど9曲をテーマに展開)」,「第一次予選(バラード,イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン,ハレルヤ,歓喜の歌など9曲をテーマに展開)」,「第二次予選(魔法使いの弟子,黒鍵のエチュード,ワルキューレの騎行,恋の手ほどき,鬼火,天国と地獄など11曲をテーマに展開)」,「第三予選(インターミッション,謝肉祭,喜びの島など7曲をテーマに展開)」,「本選(熱狂の日,愛の挨拶など4曲をテーマに展開)」という展開で,音楽の好きな人,音楽が分かる人が読んだらたまらない1冊である。そういえば,本書を薦めてくれた友人も「大の音楽好き」だった。 

 孫兄弟は,先生について10年もピアノをやっている。練習はほとんどしないが,年1回の発表会には,悪びれずにそれでも緊張感を持って参加している。もう少したったら,本書の一部を読ませたいと思う。どう受け止めるか楽しみである。