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書評:小島宏の気になる1冊その723
萩本欽一著「ダメなときほど『言葉』を磨こう」 (集英社新書 本体:700円)
著者は,コント55号で坂上二郎と,TV「欽ちゃんのどこまでやるの!」「欽ドン!良い子悪い子普通の子」でコメディアンとして笑いを振りまいていたことを楽しく思い出す。
著者は,哲学者としてでなくコメディアンとして,人間関係や家族関係,そして仕事で,思い通りにするには,思い通りにならない時には,「言葉」をどう使っていくかを,優しく教えてくれる1冊である。
著者の広い人間関係の中で,考え方,生き方などの転機になった「言葉」も,感動的に伝わってきた。小学生が読んでもわかる内容である。大人なら分かるだけでなく,その奥にある「言霊(ことだま)」に触れることもできるに違いない。
内容は次のような構成になっていて,大変読みやすい。「はじめに」と目次だけ読んでも,多くを学び取ることができる。
「はじめに(ここを読むだけで,どんな言葉を使って,どう話すかが大事)」,第1章「どんな逆境も言葉の力で切り抜けられる(ひと言を大切にする人は逆境に強い,新聞は優れた言葉の宝庫など8節)」,第2章「子育てこそ言葉が命(不登校の特効薬は「好きなことしていいよ」,勉強しなくても焦らず待つ,学校を公平な場所とは思わないことなど親と教師に耳の痛い10節)」,第3章「辛い経験が優しい言葉を育む(たったひと言で家族の結びつきは強まる,喜びは短く悲しみも短くなど8節)」,第4章「仕事がうまくいくかは言葉次第!(仕事が面白くないのは当たり前,決められたことより少しだけ多くやるのが「努力」,いい言葉には人を惹きつける力があるなど10節)」,第5章「言葉を大切にしない社会には大きな災いがやってくる(得したいは不幸のはじまり,言いにくいことも言ってくれるのが本当の友だちなど8節)」,第6章「言葉の選び方で人生の終着点は大きく変わる(素直な気持ちは言葉にしなくても伝わる,損を覚悟した言葉に運がついてくるなど8節)」,「おわりに(これからも言葉の修行に励む)」と,楽しく読めてしかも多くを学び取れる。ただし,第2章に,高校の先生が保護者からお歳暮を貰った生徒に1ランク上の成績を付けたという話が出てくるが,教師をしていたが自分を含めて周囲の教師にそのようなことはなかったし,ありえないことを明言しておく。(欽ちゃんに語った体験談だとしたら,その教師の教育観・評価観がねじ曲がっているだけでなく犯罪である)
なお,著者は,76歳の現在,駒澤大学仏教学部の学生として学んでいることを付記しておきたい。