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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その724
菅野仁著『友だち幻想―人と人の"つながり"を考える』 (ちくまブリマー新書 本体:740円)
著者は社会学者である。高校生向けに,友だちや人と人のつながりについてを啓発的に,学者らしく少し理屈っぽく書き著したものである。でも,保護者や教師をだいぶ意識して書いたようでもある。ということは,中・高生,保護者,教師向けということである。
「はじめに(友人重視傾向の日本の高校生)」,第1章「人は一人では生きられない?(2節)」,第2章「幸せも苦しみも他者がもたらす(2種類の人と人のつながり,他者との交流など12節)」,第3章「共同性の幻想―なぜ「友だち」のことで悩みは尽きないのか(なぜいない人の悪口を言うのか,心が休まらないメール即レスなど10節)」,第4章「ルール関係」と「フィーリング共有関係」(ルール関係とフィーリング共有関係に分けて考えよう,誰かをいじめると自分がいじめられるリスクが生まれるなど7節)」,第5章「熱心さゆえの教育幻想(先生は生徒の記憶に残らなくていい,話せばわかるは幻想など3節)」,第6章「家族との関係と,大人になること(大人になるということ,君たちには無限の可能性もあるが限界もあるなど4節)」,第7章「傷つきやすい私」と友だち幻想(目上の人との距離感,友だち幻想など5節)」,第8章「言葉によって自分を作り変える(関係が深まらないコミュニケーション,阻害語ムカツク・うざい・KY,楽しても楽しくないなど9節)」,「おわりに(友だち幻想を超えて)」と,人間の在り方や生き方を考える機会を与えてくれる。
特に,第8章で,「ムカツク」&「うざい」,「ていうか」,「チョー」&「カワイイ」&「ヤバイ」,「キャラがかぶる」,「KY(空気が読めない,空気を読め)」などの若者言葉に辛口の感想を述べていることに,現在のTV女子アナの言葉遣いを気にかけつつ,同感する部分が多かった。