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書評:小島宏の気になる1冊その745

鈴木孝博著「左遷社員 池田 リーダーになる―昨日の会社,今日の仕事,明日の自分」 (リーブル出版 本体:1300円)

 ドレッシング製造の中堅会社「フリージア」は順風満帆だった。ところが,創業社長の急逝で新経営陣にになると社内は一変,改革を進めるも効果なく,業績は急降下した。そんな危機状況に立ち上がり,左遷され落ち込んでいた中堅社員池田に目をつけ,指導・支援して,リーダーとして育て上げるという物語である。

 このドラマを通して,リーダーとはどのようにして育成できるか,リーダーの要件,若い経営者,企業家に向けて,理論と実際を提言している。

 口を開けば「成果を上げろ」と大声で部下を責める(叱咤激励?)するリーダーが少なくない中で,著者の「強いリーダーの行動のパターン(★順調でない人を探し,その理由を調べ,活かす方法を考える。★事前の準備(除法収集やその分析)を徹底して行い,目的と目標に照らす。★決断に当たっては,あらかじめ「やめ時(撤退基準)」を定めておく。★決断したら失敗を恐れることなく,積極的に攻撃的に全力を注ぎこむ。★どこかのタイミングで必ず前線に出て,陣頭で指揮を執る。★撤退すること,失敗を受け入れることに躊躇しない。★たとえ失敗してもその中から成功への鍵を見つけ出す。決して後悔しない)」は印象に残り,これから残り少ない短い職業生活ではあるが実践したいと思う。

 内容は,第1章「池田,左遷される(理不尽な扱いを受けてもやる気を失わないために)」,第2章「池田,立志する(思うように評価されない時の対処法)」,第3章「池田,経営を考える(誰のために,何のために会社はあるか)」,第4章「池田,組織を知る(会社の成長を加速させるために何が必要か)」,第5章「池田,企画を学ぶ(アイディアとイノベーションを生み出す環境とは)」,第6章「池田,人を理解する(多くの人を動かす「巻き込む力」を身に付ける)」,第7章「池田,プロジェクトを推進する(仕事を動かすリーダーの思考と行動)」,第8章「池田,リーダーになる(予測していなかった危機的状況ですべきこと)」で構成されており,学校関係者(校長,副校長・教頭,ミドルリーダー)にとっても,「学校の危機管理(生命の危機管理,質の高い教育の実現,いじめのない生徒指導など)」について学ぶべき事柄が沢山ある。