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書評:小島宏の気になる1冊その746

迫俊亮著「やる気を引き出し人を動かすリーダーの現場力」 (株式会社ディスカヴァ・トゥエンティワン 本体:1500円)

 A氏は2年前に勇退したが,職業生活を振り返り,「会社とは生き物だ」と断言する。元気で,明るく,前向きに業務に取り組んでいたB社が,トップの人事交代があり,新社長の独善的な経営観の押し付けや,その場限り(思いつき)の指示で,管理職は黙りこくり,社員は疲弊し,たちまち下向きになったそうである。

 そんなことが脳裏に残っており,本書を読むことになった。B社と異なり,右肩下がりのC社は,現場(管理職や社員)が自ら動き出す「リーダーシップ」の発揮と,その「仕組み」の実施によって,僅か3年でV字回復になった会社が存在すると知ったからである。

 普通の会社やちょっといい状態の会社が,ダメ会社(?)になることもあるが,C社のようにダメ会社が「最高の会社エクセレントカンパニー(少し大げさすぎるか?)」になれるというのである。A氏は,隣のビルのIT企業の再雇用社員として第二の職業生活を楽しく送っているが,B社が「会社の全てを現場中心につくり直し」,C社のように変容することを密かに期待しているそうである。

 内容を詳説するとネタばらしになるので,目次を紹介する。これだけでも「我が社を何とかしたい」,「我が社をもっと良くしたい」という管理職・一般社員の読書意欲をそそるに違いない。

 内容は,1部「10年連続右肩下がりの会社で何が起こっていたのか?(1章腐っていた経営と現場の配管:上に何を言っても無駄というあきらめと無力感,経営サイドの無自覚な現場敬氏がもたらしたものなど7節)」,2部「信頼度ゼロからリーダーシップを築く方法(1章リーダーとはフォロワーがいる存在である,2章距離を縮め心を伝える伝え方,3章リーダー性は育てることができる)」,3部「やる気と向上心を引き出す人事(1章問題は人ではなく仕組にある,2章まずは大きな石を取り除く,3章人事こそ選択と集中,4章本当に大切なのは人事の「後」何をするか)」,4部「社員の能力を100%引き出す組織・インセンティブ・会議をつくる(1章リーダーが次々に生まれる組織をつくる,2章現場がもろ上がるインセンティブを設定する,3章いい会議がいい組織をつくる)」,5部「人を動かし,未来を紡ぐビジョンを作る(1章ビジョン失くして戦略なし,2章ビジョン=らしさ×時代×経済性,2章ビジョンを生かすためにリーダーが心がけるべきこと,3章ビジョンを単なるお題目にしない方法)」,「おわりに(すべての人と会社の可能性が100%発揮される日を目指して)」という構成になっている。