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書評:小島宏の気になる1冊その750

アンジェラ・ダックワース著・神崎朗子訳「やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める究極の能力を身につける」 (ダイヤモンド社 本体:1600円)

 著者は,人生の成功を左右するのは「GRIT(グリット=やり抜く力)」で,これは「情熱(Passion:自分の最も重要だと思っている目標について興味を持続し,黙々と取り組むこと)」と「粘り強さ(Perseverance:困難や挫折に出合い辛苦をなめてもあきらめずに,最後まで努力を続けること)」で,才能より重要だということを科学的に突き止め,天才賞と呼ばれるマッカ・フェローシップサーを受賞したことで知られている。

 「才能」より「やり抜く力」だとはいうが,「俺みたいな凡人が,天才的な偉業を成し遂げられるのか?」と,平々凡々の私が思わずつぶやいた。誰にも「GRIT」を発揮すれば一流になれるなんてとても信じられない。傍から覗き読みをしていた老妻が,「あなたには,小柴博士のようにノーベル賞をとることはできないけど,あなたの成し遂げたい現実的な目標達成には,この「やり抜く力」は役立つでしょ!」,「例えば,あのバックを買って,私を幸せにしてくれるとか...」という,作り話が頭をよぎった。

  内容は,PART1「やり抜く力とは何か?なぜそれが重要なのか?」第1章「やり抜く力の秘密~なぜ,彼らはそこまでがんばれるのか?」,第2章「才能では成功できない~成功するものと失敗するものを分けるもの」,第3章「努力と才能の達成の方程式~一流の人がしている当たり前のこと」,第4章「あなたにはやり抜く力がどれだけあるか?~情熱と粘り強さがわかるテスト」,第5章「やり抜く力は延ばせる~自分を作る遺伝子と経験のミックス」。PART2「やり抜く力を内側から伸ばす」第6章「興味を結びつける~情熱を抱き,没頭する技術」,第7章「成功する練習の法則~やってもムダな方法,やっただけ成果の出る方法」,第8章「目的を見出す~哲人は必ず他者を目的(注:目標か?)にする」,第9章「個の希望が背中を押す~もう一度立ち上がれる考え方をつくる」。PART3「やり抜く力をし都側から伸ばす」第10章「やり抜く力を伸ばす効果的な方法~科学では賢明な子育ての答えは出ている」,第11章「課外活動を絶対にすべし~1年以上継続と進歩経験の衝撃的な効果」,第12章「まわりにやり抜く力を伸ばしてもらう~人が大きく変わるもっとも確実な条件」,第13章「最後に~人生のカラ損で真に成功する」で構成されており,もしかしたら自分にもという気にさせてくれる。自分の未来に希望を持っている人,人生の目標がはっきりしている人にお勧めしたい。その気があれば,読書力のある中学生や高校生にもいいかもしれない。

 ただし,実現するかどうかは,あなたの「GRIT=Passion+Perseverance」の発揮次第であることをお忘れなく。