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書評:小島宏の気になる1冊その751

キャスリン・マコーリフ著・西田美緒子訳「心を操る寄生生物―感情から文化・社会まで」 (インターシフト・合同出版 本体:2300円)

 寄生生物と宿主(含む人間)が密接かつ複雑な関係を持って,感情や文化・習慣,社会体制や社会的判断などにまで影響を持っていることが科学的に解明されつつあるということである。科学者や心理学者までが,「事実なのか?」「検証されているのか?」「そのことが将来的に,人間の生き方にどのように影響してくるのか?」と,驚いているそうである。

 TVでくどいほどPRしている健康に良い影響を与える微生物を含んだ食品,体調を崩す原因になるピロリ菌や寄生虫などについては,ある程度知識はある。でも,物事の判断や感情にも...と言われると,素人はびっくりする。

 少し論文調の本書であるが,,時間的に余裕のある人にお勧めしたい。

 「はじめにーマインドコントロールの達人」,第1章「寄生生物が注目されるまで(吸虫になったつもりで考えて!,寄生生物の策略を理解するためになど4節)」,第2章「宿主の習慣や外見を変える(コウロギの奇妙な行動,宿主の視覚を変える,伝染病を阻止する新たな方法など6節)」,第3章「ゾンビ化して協力させる(先端の医療システムに匹敵する能力,ゾンビありと太陽とSD,蜜蜂の記憶力を高めるなど5節)」,第4章「猫との危険な情事(猫から人間への感染,3人い1人が脳に住まわせている気分や人格まで変わるなど8節)」,第5章「人の心や認知能力を操る(インフルエンザウイルスが人を社交的にするなど3節)」,第6章「腸内細菌と脳のつながり(微生物相が変わると性格まで変わる,鬱や不安を和らげるなど4節)」,第7章「空腹感と体重をコントロールする(脳はチョウの出先器官として進化したなど3節)」,第8章「治癒をもたらす本能(動物たちの裏技,自然の薬など8節)」,第9章「嫌悪と進化(気分障害の背景など3節)」,第10章「偏見と行動免疫システム(相手が異質に見えるわけなど4節)」,第11章「道徳や宗教・政治への影響(道徳感情と寄生生物,宗教と衛生など7節)」,第12章「文化・社会の違いを生み出す(寄生生物のストレスが社会を変える,地政学を見直すなど5節)」という構成で,じっくり読むと「なるほど!」と知的好奇心を刺激してくれる。