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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その753
養老孟司・名越康文著「他人の壁」 (SB新書 本体:800円)
何十年も人間を続けてくると,何も言わずとも「いつも分かり合える人」と,「なんでこんなに分かってくれないんだろうという人」が,仕事の上でも,私生活でも存在する。本書を読んでいたら,養老「全部分かろうとするから悩んでしまうのであって,大半は分からなくて当然と思えば楽になる」,名越「意識されていない広大な前提の部分が違っているのに,その前提が違うということを考えないで議論しても分かり合えるはずがない」という言葉に出合い「そうだよな!」と,なぜか心が安らいでしまった。
「『他人の壁』というみえない『壁』にきづくと世の中が見えてくる!」ということなので,意味深な本書の目次を紹介し,一読をお勧めする。
序章「他人を分かりたがる現在人(分からないのは前提が違うから)」,第1章「分かる前に立ちはだかる他人の壁(外国では通じないが前提だなど)」,第2章「誤解を無理に解く必要はない(聞き流しの効用など)」,第3章「意識化と脳化がもたらした弊害(何でも説明がつくと考える危険性など)」,第4章「無理解の壁に向き合える場の力(方便の本質など)」,第5章「世界を席巻するグローバリズムの壁(英語との距離感など)」,第6章「判断を鈍らせる自分自身(人間しかわからない「A=B」など)」,終章「違和感を持つことで主体的に生きる(他人を見下す人は固定観念にとらわれすぎなど)」と,「他人」から少しは解放されるかもしれない。