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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その756
磯田道史著「司馬遼太郎で学ぶ日本史」 (NHK出版新書 本体:780円)
本書は,文学作品としての司馬遼太郎の作品「竜馬がゆく」「翔ぶが如く」「坂の上の雲」などを,「歴史学者が正面から取り上げ,戦国時代から昭和までの日本史を学ぶ本」として再評価したものである。と,著者が「はじめに」で述べている。
著者は,「司馬遼太郎(の作品)を読めば日本史が分かるは,半分は正しく,半分は間違い」で,司馬作品を読むときは「1:あくまでも文学作品で,歴史そのものではなく,なぜこういうことを書いたのか,そこにどういう史実のつながりがあるか,ということを補って読む必要がある」,「2:司馬さんの歴史の見方で,(中略)司馬さんなりの独特の歴史の見方が働いている。そこを十分理解して読まなければ,(中略)その神髄にたどり着くことはできない」と,読み方に注文を付けている。
内容は,序章「司馬遼太郎という視点(歴史をつくった歴史家,司馬作品のオリジナリティなど8節)」,第1章「戦国時代は何を生み出したのか(司馬文学と司馬リテラシー,秀吉はなぜ活躍できたのかなど12節)」,第2章「幕末という大転換(なぜわき役・敗者を描くのか,坂本龍馬は如何に発見されたかなど14節)」,第3章「明治の理想はいかに実ったか(明治維新が起きた背景,「坂の上の雲」に込められたメッセージなど17節)」,第4章「鬼胎の時代の謎に迫る(明治と昭和は切断されているか,多様性を失っている日本など12節)」,終章「21世紀に生きる私たちへ(日本の歴史を動かしたのは誰かなど3節)」で構成されている。なお,終章に関連して子供に向けた「対訳21世紀に生きる君たちへ」司馬遼太郎,ドナルド・キーン,ドナルド・ミンツァーがある。
関心のある人,時間にゆとりのある人は本書を読んでから,司馬作品を改めて読んでみてはいかがでしょうか。