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書評:小島宏の気になる1冊その760

大熊進一著「万華鏡,故郷(スコットランド)へ帰る―灯台と宝島のスコットランド」(さわらび舎 本体:1800円)

 万華鏡に魅せられて収集家になり,更に高じて万華鏡展を開催したり,歴史的(?)に追究したりして生まれたのがこの1冊である。実は,平成29年4月に実施された文部科学省の全国学力テスト数学B問題に万華鏡が出題され,もしかしたら本書を読んだら数学との結びつきが分かるかもしれないと,野次馬根性で読むことになった。

 ところが,本書は結構学問的ではあるが,数学的な追究は極めて少なかった。しかし,読み進めるに従い引き込まれてしまい,万華鏡も奥が深いものだと感じるようになった。

 第1章「そうだ,エジンバラで万華鏡展を開こう!(サイエンスを楽しむサイファン,日本とスコットランドは19世紀初頭の万華鏡の到来以来若者たちによって深く結ばれていたのですなど7節)」,第2章「念願のブリュースター博士の墓参りを18年ぶりに果す!(ステレオ写真は徳川慶喜も萩原朔太郎も大好きだった,スコットランドではクリスマスに万華鏡のセットを買って子供に作らせるなど13節)」,第3章「19世紀のスティーブンソン一族は人類の進歩を支えた!(灯台の光を頼りに万華鏡を日本に伝えたオランダ船があった,スティーブンソンとフレネ・レンズと万華鏡など7節)」,第4章「エジンバラの皆さんは,万華鏡をどうみたのでしょうか?(WOW!!!COOL!!!,潜って入れる巨大な万華鏡が一番など6節)」,第5章「19世紀,スコットランドの若者たちは,日本近代社会の基礎を創った!(日本近代化の父グラヴァーは21歳で来日した,日本に新たなテクノロジー・ムーブメントを作るためになど23節)」,第6章「見る万華鏡でなく,万華鏡の歴史を楽しむ展覧会を開く(万華鏡の命は鏡!,世界一小さく世界で唯一万華鏡だけの日本万華鏡博物館は学んで・作って・見る博物館で目でも手でも頭でも楽しめますなど9節)」,「あとがき」で構成されている。

 さらに,付録1「19世紀の万華鏡」「20世紀の万華鏡」「21世紀の万華鏡」,付録2「BEARS SCOPE」は,歴史的な名品万華鏡の鮮明なカラー写真と明瞭・簡潔な説明でとても参考になる。是非手に取って一読することをお勧めする。万華鏡の世界に魅了されること間違いなしである。