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書評:小島宏の気になる1冊その763

「総合教育技術2017年9月号」 (小学館 本体:1000円))

 表紙に「夏休み明け」を強力にサポートする3大特集号と大見栄を切るだけあって,以下のように充実している。

 第1特集は,「新学習指導要領が求める『主体的・対話的で深い』授業の具体像」を小学校学習指導要領解説(平成29年7月)を基にしながら,カリキュラム・マネジメントと総則・国語・算数・社会・理科・英語を中心に教科別ポイントを解説している。具体的には,無藤隆「総則・見方・考え方等,問題解決の道具を渡し,自立した人間を育む社会に開かれた教育課程」,高木展郎「小学校国語・言葉を対象として,自覚的に使えるような深い学びのある単元づくりが重要」,清水静海「小学校算数・資質・能力も含む数学的活動を行うため単元計画を行い,事前の指導を見直す」,廣嶋憲一郎「小学校社会・子どもが社会的な見方・考え方を働かせ主体的・対話的に学びを深める授業づくり」,片平克弘「小学校理科・深い学びを意識し,子どもの実態に即した理科カリキュラムを各学校で作成する」,吉田研作「小学校英語・外国語活動の成果を大切にしつつ帰納的に知識及び技能を与えていく」となっている。趣旨徹底の研修会資料の1つとして役立つ。

 第2特集は,生活の乱れをクラスの荒れにつなげない処方箋「夏休み明けの荒れを防ぐ生活指導・SNS指導」で,具体的内容は,鈴木邦明「夏休み明けの生活指導のポイント・全体と個々を見ながら子どもに寄り添い,学校が楽しいと感じられる指導を」,アディッシュ株式会社スクールガーディアン事業部「夏休み明けのSNS指導のポイント・ネットのポジティブな側面も知ることで生徒たちの気持ちに寄り添った指導を」,東京都文京区立湯島小学校「実践レポート・夏休み前後に子どもと保護者でeルールの作成と評価の実施」,愛知県安城市立安城北中学校「実践レポート・触れ合い,接する時間を必然的につくることで夏休みも効果的な生活指導が可能」で,参考になる。

 第3特集は,教師の多忙解消の決め手になるか!?「部活指導改革がもたらす学校の未来」である。8月30日に公表された「全国学力・学習状況踏査」の部活調査によると,「正確な分析が必要だが,部活はほどほどが高正答率と関係あるらしい」と言われている。生徒にとっては部活と学習の兼ね合い,教師にとっては部活と授業と多忙の関係が大きいようだ。内容は,現状分析「休養日の設定,外部人材の活用など各自治体による部活動の改革が進行中」,学習院大学教授長沼豊「提言・まずはNO部活動デーを実施して学校から部活動の改革を進めていこう」,岐阜市多治見市教育委員会「自治体のサポート例・教員による部活動は平日の下校時刻まで,土日は保護者会や地域運営の団体が担う」,東京都杉並区教育委員会「自治体のサポート例・教員を3タイプに分け,外部指導員やプロのコーチの協力を得て負担の軽減へ」で,これらを参考(クリティカル・シンキング)にして,本来の教師の仕事に邁進できるようにしたいものである。