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書評:小島宏の気になる1冊その765
赤堀博行監修・盛岡市立河北小学校著「考え,議論する道徳授業への転換~自己を見つめ,他者とのかかわりを深める道徳授業~」 (教育出版 本体:1800円)
道徳科が「考え,議論する道徳」として,平成30年度から実施される。ということであるが,学校現場は,「何を?」「どうすればいいのか?」,理解しきれていないのが現状ではないだろうか。大げさな言い方をすれば,「藁にも縋る(≒The danger past and God forgotten.)」心境であろう。
そんな時,20年も道徳教育に地道に打ち込んできた河北小学校が,その実践を平成27・28年文部科学省国立教育政策研究所「教育課程研究指定校」として,「考え,議論する道徳」の視点から見直して,理論的,実践的に整理して提言したものが本書である。
道徳科の設定に呼応して,様々な理論書,実践事例集などが多く刊行されているが,本書は,20年超も子供に密着して進めてきた道徳教育への提言で参考になる。クリティカルリーディングをして,児童の実態に応じた自校流の道徳科の授業の充実に活用されることを期待する。内容は,監修の赤堀博行帝京大学教授(前文科省道徳科担当教科調査官)の序章「特別の教科 道徳の実施に向けた授業改善の要点(道徳教育の教育課程上の位置づけ,学習指導要領の一部改正の概要,これからの道徳教育に期待されること)」に続いて,次の様な河北小学校の実践例が紹介されている。
第1章「学校の道徳教育の重点目標に基づく全体計画の作成と実施(全体計画の作成とその改善,学級における道徳教育推進計画の立案など4節)」,第2章「各教科等の特質を生かした道徳教育の実際(各教科等における道徳教育の基本的な考え方,各学年における道徳教育の実際など4節7事例)」,第3章「考え,議論する道徳授業の実際(考え,議論する道徳授業の基本的な考え方,学年ごとの考え,議論する道徳授業の実際の2節7事例)」と,充実している。(文献紹介:文部省「小学校・学校における道徳教育」「中学校・学校における道徳教育」1968年 内容は各教科等における道徳教育の進め方の実際の解説で,現在でも参考になる)。なお,同校には,教師が戸惑い,保護者が心配している「道徳科の評価」について研究し,一つのモデルを提示してもらいたいと期待している。