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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その767
山田かおり著「猫には嫌な所がまったくない」 (幻冬舎 本体:1300円)
我が家にも猫「アビちゃん」がいる。私が知人からまだ目の開かない頃にもらってきた。
哺乳瓶でミルクを飲まして育てた。従って,私にべったりで,ひと時も離れなかったが,暫くすると,餌と下の世話は私にさせて,遊ぶのは家内になって,寄り付かなくなった。
ところが,孫たち二人が「アビちゃん! アビちゃん!」とやや乱暴に構うようになると,そちらに愛想を振りまくようになり,孫の膝に乗ってのんびりと過ごすようになった。というように,猫は,自己チューなのである。
しかし,本書に登場する猫は,著者に言わせれば「嫌な所が全くない猫」なのである。恋人のような存在である。少々大げさではないかと思いつつ,読み進めていくと,素直に著者の心境になってしまい,楽しく読み終えることができた。
内容は,私的で,日常のどうでもよいことで,どこにもあるようなことばかりであるが,なぜかホッコリするから不思議である。本書を読んで教養を高めようなどということを期待しなければ,「朝の寸劇」「母は猫を諦めない」「チャッピーのダダと便器のハプニング」「毛玉」「子育て」「ヌーヴェルバーグ」「ファンクラブを結局つくらない」「デブなのはお互いさま」など45の短編随筆と50枚の愛らしい猫の写真が楽しめる。