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書評:小島宏の気になる1冊その768

澤井陽介著「授業の見方「主体的・対話的で深い学び」の授業改善」 (東洋館出版社 本体:1850円)

 教育書や教育雑誌は,今や「主体的・対話的で深い学び(ALの視点による授業)」で溢れかえっている。本書もそれらの中の一冊である。著者は,かつて東京都立多摩教育研究所(現在は閉所,私も2年ほど勤務していたことがある)で研究的に過ごしただけあって,論理的かつ実践的な論述でよく知られている。本書は,「授業とは何か」という本質的な問いを持って,「授業の見方」「主体的・対話的で深い学びを実現する授業」について著したものである。若手教師は授業の基本を学ぶ,中堅教師は自身の授業の質(専門性)の向上,ベテラン教師のリニューアルの手掛かりとして活用できる良書である。社会科教育専門の教師の経歴の著者らしく,多くの観察から得た知見,データや図表の活用,箇条書きによるポイントの示し方,簡潔明瞭な文章表現などなど読みやすい。

 第1章「学びのプロセスを質的に高める授業改善の視点―これからの教師に求められる指導力とは?(主体的な学びとは,対話的な学びとは,深い学びとはなど5節)」,第2章「授業の見方を知る―授業者を通して授業を見る,子供を通して授業を見る(指導案とは何か,学習展開から授業を見る,子どもの学習の様子から授業全体を見る,授業を記録するなど8節)」,第3章「授業の見方が生きる(学級の子供たちへの目線が変わる~子どもの存在をあらためて知る~,教師としての心の立ち位置が変わる~教師の役割をあらためて知る~,授業への想いが変わる~自分の未熟さをあらためて知る~などについて10節)」,第4章「授業の見方を生かす(研究授業はコケるものと覚悟する,ゴールがないから研究と割り切る,指導案は30分相当の内容でつくる,授業協議会への参加姿勢を変える,社会科のカリキュラム・マネジメントを実現するについて11節)」と,密度の濃い情報(解説,知識,技能,考え方,心得,コツ,事例など)が満載である。